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Q, Biako…今週のおすすめ 5 Best Songs:2023-17

今週も新人の新譜から厳選して5組のアーティストを紹介します。音楽ブログ「abstract pop」の「5 Best Songs」の企画では、国内の音楽メディアでは紹介されないような、海外の新進気鋭なアーティストを毎週紹介していきます。過去に紹介したアーティストは下記にまとめてあります。

Spotifyのプレイリストも更新してます〜


Q

2020年の個人的なベストEPでも選出した、フロリダを拠点に活動するベッドルーム・ポップ・アーティスト、Qが新作アルバム『Soul,PRESENT』をリリース。Qについてしっかりとどんなアーティストかを記したことないので紹介すると、彼のお父さんはSteven "Lenky" Marsdenというダンスホールやレゲエのシーンでは名の知られた音楽家で、あの「Diwali Riddim」の伝説的な作曲者で、Rihannaの「Pon De Replay」やSean Paulの「Get Busy」もこの楽曲からサンプリングしているそう。そんな音楽一家で育ったQの英才教育っぷりはすごく、すでに3作ほどアルバムを出してきているという多作ぶり。今作は3年ぶりの新作ですが、今までとは少し毛色の異なる洗練されたサウンドに仕上がっています。今まではどちらかというと、ローファイな質感でポスト・『Blonde』でありつつSteve Lacy以降のR&B寄りのベッドルーム・ポップを奏でてきました。
今回ではそんな父親の影響が全面に出た、ファンクやディスコ、レゲエなどの音楽性が色濃く反映されています。非常にタイムレスなポップさが1曲1曲に滲み出ていて、力のかけ方が半端ないと聴き終わった時に実感しました。まず70〜80年代の音楽へのリスペクトがすざましく、当時の音楽を冷凍保存して現代に蘇らせたような質感。しかししっかりと"現在"に至るまでの音楽性も昇華させたサウンド感になっていて、Qの天才ぶりが存分に発揮されています。今まではローファイなギターサウンドがトレードマークでもありましたが、今作ではほぼ使っておらず、シンセサイザーやキーボードを多用したとのこと。そのため彼の優美で柔らかくもソウルフルな美声が際立った作品にも仕上がっていますね。


Biako

LAを拠点に活動するプロデューサー/ソングライターであるItai David Shapiraによるソロプロジェクト、Biakoが自身初となるアルバム『Feelings Happen』をリリース。彼は今までにKadhja BonetやBaby Rose、Masego、Fousheé、Mereba、Fana Huesなどなど多くのアーティストの作品に関わってきた方です。今作ではそんな彼の多岐にわたる交流が反映されており、客演にはBaby Roseをはじめ、Jean Deaux、Leven Kali & Van Hunt、Peyton、Mamiiが参加しています。
音楽性としてはネオ・ソウルやR&B、ファンク、ジャズなどをブレンドさせたスムースでグルーヴィーな音楽性に仕上げています。楽器の主体はシンセサイザーで、そのサウンドの構成がチルウェイヴやシンセポップを通過したような爽やかさもあってそこも魅力的です。また彼の透明感漂う甘美なファルセット・ヴォイスが合わさることで、独特の浮遊感やノスタルジックさが出るのもいいですね。個人的にはToro y MoiとThundercatがセッションしたら…みたいな夢みたいなコラボ作品を聴いているようでした。


Tuzeint

アメリカ・カルフォルニアのモントレー出身で現在はメキシコシティーを拠点に活動するシンガー・ソングライター、Tuzeintがデビューアルバム『Raixes』をリリース。今作で初めて母国語であるスペイン語を全曲で使用した作品になっているとのこと。
ラテン音楽やボサノヴァなどを中心に、ソウルやジャズ、サイケデリックなどをミックスさせた、クラシカルでありつつも非常に洗練された音楽性を作り上げています。また今作ではメキシコの先住民たちの伝統的な楽器も使用しているそうで、多彩で幅広い音楽性を存分に堪能できる作品となっているのも魅力です。全体的に神秘的でエキゾチックなムードに包まれ、ボーカルの放つ内省的でメランコリックな質感による歌声が絡み合うことで、絶妙な空気感とバランス感を保った作品だなと思いました。


Kaz Moon

テキサス・ダラス生まれ、現在はNYを拠点に活動するSSW/プロデューサー/写真家の肩書を持つCody Yaoによるソロプロジェクト、Kaz Moonが新作EP『STAR ANISE』をリリース。
彼の作り上げるサウンドはとてもユニーク。ギターを基調としたインディー・ロック・サウンドでありつつも、グリッチやノイズなどの煌びやかだけど歪な電子サウンドを織り交ぜたり、ダンスミュージック的なビートやヒップホップなどの要素も含めた、ジャンルを横断した音楽性を奏でています。甘酸っぱくも気怠げな歌声も入ることで、淡いベッドルーム・ポップ的なムードに仕上がっていますね。Dominic FikeやYeek辺りが好きな方におすすめな感じの音楽です。


Liza Lo

オランダ・アムステルダムで生まれ育ち、現在はロンドンを拠点に活動するシンガー・ソングライター、Liza Loが新作EP『flourish』をリリース。彼女は以前Rosie Loweのライブのサポートアクトに出演したり、BBC Introductiongで紹介されるなど、徐々に知名度を広げています。
クラシック・ギターの分厚い弦の温かい響きと、陶酔的で幽玄なアンビエントサウンドが溶け合ったオーガニックなサウンド。渋く伸びやかな美声はシルキーで水の波紋のように綺麗に靡いていく。それらが美しく絡み合った、心の平穏を与えてくれるような耽美的なEPの仕上がりとなっています。

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