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Nourished by Time, Girlhood…今週のおすすめ 5 Best Songs:2023-15

今週も新人の新譜から厳選して5組のアーティストを紹介します。音楽ブログ「abstract pop」の「5 Best Songs」の企画では、国内の音楽メディアでは紹介されないような、海外の新進気鋭なアーティストを毎週紹介していきます。過去に紹介したアーティストは下記にまとめてあります。

Spotifyのプレイリストも更新してます〜


Nourished by Time

USのメリーランド州のボルチモア出身でサウスロンドンとの2拠点で活動するMarcus Brownによるプロジェクト、Nourished by Timeがデビューアルバム『Erotic Probiotic 2』をリリース。彼は最新のYaejiのアルバム『With A Hammer』のM11「Happy」で客演で参加したり、最近のDry CleaningのUSツアーのオープニングアクトに抜擢されるなど、幅広いジャンルのアーティストから支持を得ている音楽家です。
2021~2022年にかけてボルチモアの実家の地下室で制作されたというデビュー作は、DIYプロダクションを感じられるローファイな温かみを保ちつつ、強靭さと脆弱さが表裏一体となったようなユニークなサウンドを奏でています。ニュー・ウェーヴやソウル、ヒップホップ、Vaporwaveなど多岐に渡る音楽性が絡み合った、ノスタルジックで鮮やかなメロディー。そして彼のソウルフルだけど淡さも含んだ美声が融和し、身体にじわじわと沁み渡るような耽美な作品に仕上がっています。彼の音楽は全体的にシネマティックな映像美も脳裏に浮かび上がるようなサウンドの鮮明さもあって、本当に素晴らしいです。郷愁に浸るような感じでもあるんだけど、忘れかけた何かを思い出させてくれるような、面白い音楽作品です。


Girlhood

2020年の個人的なベストアルバムにも選んだ傑作から3年。ロンドン拠点のChristianとTessaによるR&Bデュオ、Girlhoodが最新アルバム『The Lowdown』をリリース。今作をもってボーカルのTessaが脱退して、実質Christianによるソロプロジェクトになるそう。今作も彼女が参加しつつも多数のミュージシャンがレコーディングに集まった、ある種コレクティヴのような作品となっています。そんな多種多様なミュージシャンが集まったこともあってか、多幸感溢れるソウルミュージックパーティのような最高のアルバムに仕上がっています。アップビートでグルーヴィーなボトムに、カラフルで幸福感に満ちたさまざまなボーカルが歯車のようにかっちりと組み合わさり、陶酔的でダンサブルなものに。ソウルやファンク、ゴスペル、ディスコ、ヒップホップ、ハウスミュージック、マッドチェスター、ダンスミュージックなど全てを昇華して、The Avalanches的なスムースなサウンドデザインに落とし込む、天才的な所業をこのアルバムで表現しています。1曲目から最後まで本当に最高です。あまり話題になっていないアーティストですが、かなりやばいと思います。


amy michelle

アイルランドのマリンガー出身のシンガー・ソングライター、amy michelleが新作EP『felicity stories』をリリース。Elliott SmithやPhoebe Bridgers、そして最大の影響源でもあるThe 1975からインスピレーションを受けたと語る彼女は、YouTubeでデモやカバーを上げていたところ、それに火がついて人気を博していったそう。最大の特徴はダウナーでたゆたうような儚げなウィスパー・ヴォイスと、それとは裏腹に鳴り響くグランジやオルタナを通過した歪んだインディー・ロック・サウンド。繊細な歌声と豪快なバンドサウンドという、その両面を持ち合わせた絶妙なバランス感が非常に魅力的です。ダークでメランコリックなムードが全体的に漂いつつも、神々しい光の粒が乱反射するような幻想的な感じも素晴らしいです。


yej

USのナッシュビルを拠点に活動するベッドルーム・ポップ・アーティスト、yejがデビューEP『Tantrum』をリリース。インターネッツで調べても全く情報のないアーティストで謎のベールに包まれていますが、作品を聴けばその実力は間違い無いかと思います。
音楽性としては、M1「Uh Oh」のインディー・ソウルのようなメロウでグルーヴィーな楽曲から、M2「Skinny Alt White Girl」の疾走感あふれるインディー・ロック・ソング、M3「Want Me」の彼女の作曲センスが全面に出たアコギの弾き語り〜感情が溢れ出るようなバンドサウンドが魅力の楽曲など、ベッドルーム・ポップからオルト・ポップまでのシーンを網羅するような作品に仕上がっています。一貫して彼女の滑らかでソウルフルな美声が作品の軸としてあるような印象も受けました。Spotifyでyej自身が作成したプレイリストを見ると、MitskiやGorillaz、Hope Tala、Monsuneなどが入っていたりと、たしかにその片鱗も感じさせるような作品に。


banríon

ダブリンを拠点に活動する4人組バンド、banríonが新作EP『dare to crush』をリリース。フロントマンのRóisín Ní Haicéidのソロプロジェクトとしてもともとスタートしていましたが、彼女の作曲センスに惚れ込んだメンバーが固定化してバンドの形に。ダブリンの地元でもかなり人気だそうで、そこから口コミでどんどん広がりつつあるバンドです。シンプルに良いメロディーや良いサウンドを小細工なしで追求した、ストレートなインディー・ポップサウンドがとても魅力的です。そんな爽やかで穏やかなサウンドに、甘美で凛とした歌声が溶け合い、いまの初夏の季節にぴったりなEPですね。Róisín Ní Haicéidのシンガー・ソングライターとしての繊細なメロディーセンスと、バンドサウンドによるダイナミクスが見事に融合した音楽性はさすがですね。そのどちらも持ち合わせているからこそ、オリジナリティーの高いインディーサウンドを奏でています。

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