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90年代の音楽を知らないアナタへ その34 FEEL NO PAIN (92)/SADE 時代を超越する音楽があるとすれば、間違いなく彼女の音楽は最強のトリップミュージック。

音楽が好きな方なら、シャーデーときいて浮かんでくる曲がそれぞれ違ってくるかもしれない。それは至極当然で、各時代に名曲級の代表曲を持っている数少ないアーティストだし、アルバム曲含めてすべての楽曲が神がかっているといっても過言ではない。改めて言うまでもないと思う。

これがシャーデーを取り上げる際、何を選べばいいのか悩む所以だ。何を選んでもいいんだけど、ベタな曲はいまさら感があるし、レア曲やマニアックな曲を選べば通ぶってると思われるのもしゃく。かえって魅力が伝わりにくくなったりするもの。あれこれ考えて、とりあえず自分の好きな曲を取り上げればいいんだと素直に考え直し、この曲「FEEL NO PAIN」について語ろうと思う。

「FEEL NO PAIN」とは痛みを感じないとか、死んだも同然とか、酔ってなにも感じないとか、要するに感情を持たない状態を意味する言葉である。

ここで歌われているのは貧困について。

「ママが解雇され。パパも解雇になった。お兄ちゃんも解雇され、もう2年以上経つ。」こんな暗いイントロから始まるこの歌は、終止重苦しいベース音が支配する。それにシルクのように絡みつくシャーデーの声が一筋の光のようであり、ストーリーテラーのように冷酷でもある、不思議な感覚。

シャーデーの音楽はひかくてきシンプルな音色が多いが、この曲はその最たるものだと思う。2、3ほどの音とシャーデーの声のみ。それほどまでに装飾を削ぐことで、リリックを際立たせ、声を際出させ、聴く者の心臓にダイレクトに迫ってくる。シャーデーを聴くと時代感を忘れ、いつでも「今」の感覚に陥る。それが最高なのだ。


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