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ファン慟哭。音楽ファンは知るべし。真事実あり!記念盤はサイコーだった。中森明菜 Wonder [10インチレコード] (Color Vinyl)

2023年9月26日に中森明菜の企画アルバム「WONDER」の初アナログ盤がリリースされた。

数ある中森明菜のディスコグラフィの中でもリリース当時から最大の問題作と言われていたアルバム「不思議」のリミックス盤として88年6月にリリースされたのが本作。当時はCDが新しい音楽媒体ということで実はアナログ盤はリリースされていなかったのだが、アナログブーム真っ只中の今、まさかの10インチ仕様のアナログ盤で初リリースされるというなんだか時空がめちゃくなちゃになった感覚がしないでもない。このアルバムは大好きだったけどまさかアナログで聴けるなんて思ってもいなかった。それだけでもうれし驚きなのだが、さらにクリアヴァイナルというスペシャル仕様で、明菜ファンにとっては特別なパッケージングとなったのではないだろうか。

しかしファンの所有心を満たすのはそれだけではない。インナースリーブとして封入されていた2代目ディレクター藤倉克己氏の回顧録が大収穫である。当時あまり詳細に語られることがなかった「不思議」とその2年後に突如企画盤としてリリースされたこの「WONDER」の経緯と関係。新事実も含め、噂の事実や否定もちゃんとしてくれたり、一面ぎっしり記された文字をあっという間に読み終えるほどの面白さである。当時を知らないファンや思い込みに捻じ曲げられてしまった事実を矯正して整頓してくれている素晴らしい書記だと思う。

明菜ちゃん本人の口から語られることは今後もないだろうが、それならそれとして藤倉氏の今回の書記は、80年代の中森明菜音楽活動の一つの歴史の証言として大変貴重とも言えるのではないだろうか。

この書記の中で「ヴォーカルを採り直したのか否か」に触れる場面があるのだが、それを知った上で聞くとオリジナルの最終版の出来栄えの素晴らしさを再認識すると同時に、「WONDER」で聴かせてくれるヴォーカルコントロールの正確さと美しさに改めて聴き入ってしまう。

デビュー40周年記念のメモリアルとしてさまざまな企画が登場している中森明菜は、いまだに沈黙を続けている。しかし今年いっぱいCDのみでリリースされていたアルバムがどんどんLP化されていく予定であり、所有する意味では楽しみはまだまだ続いていく。かつての作品を別角度から再解釈したり、聞き直したり、聞いたことなかったアルバムに耳を傾けてみたり彼女の再登場を待つまでの時間を、ただ沈黙だけでは終わらせないのもまた彼女らしい気遣いである。

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