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〆切(とアダプテーション)について

ぼくの現状の〆切には2種類、〈①小説の〆切〉と〈②SF考証の〆切〉があります。人生の〆切的なものはさておいて、今回はお仕事について。
この①②、〆切という観点から考えると結構違っており、ある種のみなさまにとってはなかなか面白いのではと思ったので今回記事にします。キーワード/裏テーマは〈アダプテーション〉です。

小説2種類

2種類の〆切論なわけですが、高島が最近書いている小説にも大きく2種類──〈A.オリジナル〉と〈B.(スピンオフやノベライズなどの)アダプテーション〉があるのです。
A.オリジナルの小説はわかりやすいと思います、高島個人が単独で書く、オリジナル小説のことです。厳密にはオリジナルと言っても編集者さんの意見や先行作品の影響もあるので、ぼくは現在のところ、ある程度はあとがきで触れるようにしています(あとがき的なものはこれまで5つくらい書いていますが、小説あるいは書籍にとってなかなか大事で、あとがき論もいずれ書きたいところです。ささっと調べた限り、荒俣宏さんのあとがきだけ集めた楽しい本以外には、あまりあとがきをテーマにした本はないようです)。
さてさて、ぼくはこのA.オリジナル作品を、長編/連作短編集の単著として、これまで三作出しています。
▶『ランドスケープと夏の定理』(2018年刊行、2020年文庫化、ぜひ!)
▶『不可視都市』(2020年刊行、個人的に気に入っている作品です、ぜひ!)
▶『青い砂漠のエチカ』(2021年刊行、最新作、ぜひ!)

今年2021年にもう一冊出せるよう鋭意執筆中です。

アダプテーションとは

2種類ある小説のもうひとつ──B.アダプテーションとは、まずは「翻案」「適用」を意味する英単語で、映画のノベライズ作品などをアダプテーション作品と言います。最近ぼくがまさに〈アニメーション作品に対するアダプテーション作品〉を何作か書いていることもあって、個人的に興味を持っている分野です。
※アダプテーション研究者の方で、ぼくに興味がある場合はぜひお気軽に、TwitterのDMなどにご連絡くださいませ。研究/共同研究などなど全面協力いたします。
※※『シン・エヴァンゲリオン』あるいはエヴァシリーズ全体が巨大なアダプテーションなのだという論考──
「さよならの向こう側——〈説明不足〉の象徴としての宇部、あるいは〈情報過剰〉アダプテーション」
を以下の本に書いています。

ぼくは庵野秀明監督と同じ〈山口県宇部市出身+宇部高校卒〉ということで──ということでもないんですけども──『シン・エヴァンゲリオン』やエヴァシリーズにとって重要な〈宇部〉について考察しています。
宇部は、庵野監督の実写作品『式日』の舞台でもあり、エヴァシリーズのなかでもアダプテーション≒語り直しがおこなわれている重要な場所であり、概念です。Kindle版もありますのでぜひー

オリジナルの〆切とは

〆切に話を戻しますと、A.オリジナルだとまずは白紙というか何もないところから作っていくので、しばらくのあいだは〆切も曖昧だったりします。「夏までに出せるといいね」的な雰囲気です。
〆切も内容もすべてぼく次第ということで──そういう物理的社会的条件によって必然的に──他の案件がなければ昼夜逆転しながら超長時間をかけたりも可能という仕事のやりかたになります。

②SF考証の〆切(とB.アダプテーションの〆切)

SF考証やB.アダプテーションの仕事には──オリジナルがひとまず〆切が曖昧なのと対照的に──明確に結構初めから〆切があります。
理由は簡単で、SF考証やB.アダプテーションはその定義から当然、ぼくが作業する前から何らかの企画や原作があって、オリジナル小説よりもずっとたくさんの人が関係していて、全員のスケジュールが結構きっちりと決まっている/隔週などで定例会議があるから、です。
よくあるパターンとしては、ある日の定例会議で課題が出て、それを2週間後の定例会議の数日前までに考える、というスケジュール感。数日前というのはみんなが目を通す時間的余裕のためです。
すべてはチーム戦であるという事実から決まっており、SF考証としては気づいたことがあればその都度あれこれ発言することも少なくないですが、基本的には──企画段階では世界観設定、シナリオ段階ではネーミングや語句調整など──時期と仕事内容はおおむね自動的に決まります。そしてその仕事は一回出せば終わりではなく、多くのスタッフからの意見を受けて調整するということを何回も繰り返すことになります。チーム戦ですし、長期戦です。
大変そうに書いたかもですが、課題も〆切もきっちり決まっているこちらのパターンもぼくは結構すきです(アニメもゲームももちろんあれこれありますが、とはいえエンタメとは自分以外の誰かを楽しませる行為であり、エンタメしたいと思っている楽しい人達が集まっていることは断言できます。エンタメ業界志望の方はぜひがんばってみてください)。

ちょっとだけ受験勉強について

受験勉強についてはエンタメ的に面白いと思っていて、いずれフィクションでもノンフィクションでも本にできればと考えています。
エンタメ的というのはつまり受験にある〈ゲーム性〉に着目しているからに他なりません。何かを解決/クリアするために、どれだけ効率よく、あるいはどれだけ遊ぶことができるのか──みたいなことをテーマにするのか、まだふんわり段階なので書籍の構成はまた今度ということで、受験勉強について言いたいことに戻ります。
ぼくは受験勉強をそれなりにしたと思いますが、上に書きました宇部高校はあまり宿題を出す学校ではなく、自分ですきかってにやるべき参考書を決めて、ごっちんごっちん勉強していました。
受験は(家族の協力や友人恋人と同じ学校に行きたいとかを別にすると)基本的には個人戦です。なのでオリジナル小説を書くのと似て、自分でスケジュールを決めて進めることになりますし、実際高校生のぼくはそのように進めていきました。
そう考えると、ぼくはそういう時間の過ごし方がすきなのかも、あるいは、もしかすると得意なのかも、と思います──というようなところから始まる受験小説は結構アリな気が。
※受験小説/受験ノンフィクションにご興味のある編集者さま、ぜひTwitterのDMからご連絡くださいませ。

2つの〆切

色々書き散らしてきましたが以上をまとめると、
▷オリジナル(の初期は特に)は、〆切ナシ+書く内容も不明瞭でぼく次第
▷SF考証やアダプテーションは、〆切アリ+書く内容もかなり決まっている
、となります。
およそどのような仕事でも、自分一人の裁量による自由な個人戦的仕事と、対人業務のためにスケジュールが決まっているチーム戦的仕事、2つがないまぜになっていることと思います。なのでみんながんばりましょう、で終わるというのはあれなので、もう少しだけ。

今回のオチ

ということで〈個人戦的仕事:チーム戦的仕事〉あるいは〈〆切のない仕事:〆切のある仕事〉という対比について、あるいはこの比率の可変性について、最後に考えます。
この比率を変えることはおそらく結構難しく、ぼくのような二足(三足以上)のわらじ的なフリーランスであっても、そのあたりの事情は変わらないように思います。
その理由は──ひとまず仮説として──その仕事、その業務内容からある程度は自動的に、個人戦/チーム戦や〆切ナシ/アリが決まってしまう、ということではないかと推察します。もちろんどんな仕事にも可変性は常にあって、変えたい場合はがんばればいいと思います。
という確認をして、小説執筆とSF考証に戻ってくると、たとえばオリジナル小説であっても複数人で書いてもいいわけですし(そうすると〆切は発生しそうです)、大規模なゲームやアニメであってもAIとの協働で〆切なしで制作を進めてもいい、という未来も見えてくる、というぼく自身の働き方に対するSF考証をして今回は終わりです。おつかれさまでした!

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