高度外国人材獲得に必要な制度(2) (NHKラジオ2022年12月22日放送)
みなさん、こんにちは。今回も、NHKラジオのレギュラー出演番組 「マイあさ!」の「マイ!Biz キャリア&ライフスタイル」コーナーで田中孝宜キャスターとお話した内容を、こぼれ話を含めてお伝えしたいと思います。
今回のテーマは前回に続いて「高度人材獲得に必要な制度」です。
(注:この放送後、2023年2月17日に政府は高度人材獲得に関する新たな受け入れ策を発表しました)
田中キャスター:高度人材ポイント制度の導入から10年が経っている中で、あまり効果があがっていない理由は何でしょうか。
九門:主に2つあります。第1に、企業や外国人材ともに同制度への認識が広がっていないという点です。2022年の日本経済団体連合会の報告書では、「高度人材ポイント制度は親や家事使用人も帯同できるなど特例措置を持つが、十分に周知されているとは言い難く、魅力発信が不可欠である」と指摘されています。また、地方で外国人材の在留資格変更などに携わっている行政書士などによると、地方の中小企業などでもほとんど認識されていない状況ということです。
第2に、手続きの煩雑さと企業のメリットが薄い点です。企業にとっては、申請にかかる取り寄せ書類などが多く、申請の準備が大変であるという声も聞かれます。
田中キャスター:今後、政府は制度の見直しを進めていくということですが、その際に大切なことは何でしょうか。
九門:最大の問題点は、同制度の想定する人材と実態の乖離が生まれているという点にあります。この制度の当初の目的は、世界レベルの先進的な研究を行っている研究者、技術者や高度な経営人材など非常にハイスペックな外国人材を誘致することにあったと考えられます。しかし、この制度を利用する外国人はまだ少なく、実際に受け入れている高度外国人材は、例えば日本の大学や大学院に留学して卒業し、日本企業などで新卒社員として働く主にエントリーレベルの人材や、すでに働いている若手社員、IT人材として 日本に海外から直接来日するミドルレベルの外国人などが主体と考えられます。つまり、当初のターゲットと実態が合っていないということです。
田中キャスター:ではターゲットをどう定めて、どのような制度を今後作っていくべきでしょうか。
九門:もし、当初の目的通りに非常にハイスペックな人材を誘致するのであれば、ポイント制度や日本での就労機会の海外への英語での積極的な発信に加え、受け入れ側の企業の雇用や待遇など、社会が大きく変わらないと難しいです。日本に永住して働くための外国人に向けた医療や教育など様々な環境整備、社内での英語使用や給与をハイスペックな人材に対して上げるなど職場環境の改善も必要になります。
しかし、企業でこれらの改革が急激に進むとは考えにくい中、今のように、ターゲットと現実がずれている状態で新たな制度をいくら作っても、また仮に非常にハイスペックな外国人材が日本に来たとしても定着するのは難しいでしょう。
田中キャスター:ハイスペックな人材を誘致しようとするのは、あまり現実的ではないということですね。では、ターゲットをどこに定めていくのがいいでしょうか。
九門:現実的には非常にハイスペックな人材を大量に求めるよりは、高度人材予備軍である留学生を中心として採用していくことを通じて、将来の高度人材になる人材を日本に増やし、定着させていくことが重要だと思います。
最近は地方にハイスペックな外国人材を誘致するという議論も多いのですが、地方企業には当初制度で想定されていたようなハイスペック人材の需要はそれほど多くありません。むしろ、大学や大学院卒で新卒で入社したエンジニアや海外から中途採用した外国人材が働きやすい組織を創っていくことが大事ではないでしょうか。勤務経験があるミドルレベルのIT人材など大幅に不足する人材は当面主にアジア圏を中心に海外から採用するのも1つの解決策です。
田中キャスター:すでにハイスペックな人材を求めるのも大切ですが、高度人材予備軍である留学生をしっかりと受け入れて育てていくことが大切ということですね。九門さん、ありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?