コスタンツィ/チェロ・ソナタ集(2) 収録曲紹介 チェロ・ソナタ ヘ長調
はじめに
既報の通り、17世紀前半のローマを代表する作曲家/チェリスト「コスタンツィ/チェロ・ソナタ集」がコジマ録音より発売中です。
“ぶらあぼ”のNew Release Selection
先日の朝日新聞 for your Collection クラシック音楽欄で推薦盤になったのに続き、“ぶらあぼ”のNew Release Selectionでも取り上げられました。
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懸田貴嗣/コスタンツィ チェロ・ソナタ集
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今回もコスタンツィ/チェロ・ソナタ集の収録作品のついて少しずつコメントしていこうと思います。
今回は2曲目、チェロ・ソナタ ヘ長調
CD2曲目はへ長調のソナタです。
Grazioso - Allegro - Alla Franceseの3楽章。
前回の変ロ長調と同様、このソナタもコスタンツィのソナタ群の中で親しみやすいという点で筆頭に上がるものの一つです。
1楽章はGrazioso
表記の通り、典雅な旋律が通奏低音と3度でハモりつつ始まります。
このような書法はボッケリーニにも時々見られるものです。
たとえばこのように。
この場合のボッケリーニでは上下が入れ替わるという対等な扱いです。
このような例は通奏低音にもチェロを用いたのではないかという推測の論拠にもなることがあります。
コスタンツィは他のソナタでもしばしばこのようなチェロ二重奏的な扱いをしていて(実際に2本のチェロのため、と表記しているソナタもある)、彼の周辺でそのような例がよくあったのではないかと考えられます。
このような習慣、書法がコスタンツィを通じてボッケリーニに伝わったものなのか、それともコスタンツィ周辺に限らず一般的なものであったのでしょうか。
これに類するもっともポピュラーな例は、バリエールのソナタ4巻のこれかもしれませんね。
上下の交代、カノン的な扱い、3度連続平行などなどこのバリエールのソナタは明らかなチェロ二重奏的な書法です。
さて、コスタンツィ1楽章最後にはこのようなお茶目な小モティーフが突然出てきます。
ユーモラスというかかわいらしいというか、コスタンツィの密かな魅力の一つです。
2楽章は4拍子のAllegro。
これも低音との3度連続平行が!(2〜4小節)
2段目後半では通奏低音にチェロ声部の模倣があります。
さきに言ってしまうと3楽章のAlla Franceseにも両声部が3度平行の箇所があります。
しかも最後の小節は低音声部が重音となっており、やはりバス声部にはチェロを想定したのではないか、という推測が成り立ちます。
ちなみにこのソナタのタイトル表記には、“Sonata a violoncello e basso”としかありません。
アレグロの最後はこのようになります。
バスと3度平行で動いたり、非常に近い音域で絡み合いながら、見得を切るような最後!コスタンツィ、カッコいい!
3楽章は、Alla Francese (フランス風)という表記。
コスタンツィの先輩、同僚でもあるGaetano Boniのソナタにも同様の楽章があることが知られています。
以下、ボーニのソナタ譜例。
Allegro, Adagio楽章がともに見られますが、いずれも舞曲のスタイル、ボーニのソナタ12曲のうち6楽章にAlla Franceseが付記されており、かなりの割合です。
これはボーニの雇用主でもある枢機卿オットボーニとフランスとの強いつながりに由来すると考えられています。コスタンツィも同様にオットボーニが亡くなるまで彼の楽団に在籍していたので、そのようなパトロンとの関係性が伺える事例となります。
このメヌエット(とは書いてないですが)楽章は、26小節という非常に短い楽章なので、それに2つのオリジナル変奏を加えています。変奏も含めて作品を楽しんでいただけたら!と思います。
この作品はストックホルムの図書館に所蔵されるコスタンツィ手稿譜ソナタで、同図書館のコレクションにはコスタンツィのチェロ協奏曲も1曲だけ含まれています。(そちらも入手済み)
ということでこのシリーズもまだまだ続きます!
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