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ネット広告「認知」について

以前から「ネット広告=コンバージョン(売上獲得)させる」ものとしての理解が進んでいるようですが、本noteではその認識に対して補足をします。

個人的にも「ダイレクトレスポンス広告」と「ブランド広告」という分け方がしっくりきておらず、またブランド広告は「代理店のクリエイターが趣味で作ったようなものが多いのでは?」という批判もしっくりきてません。
…というわけで、その辺の情報を整理してみたので、ご興味ある方はお読みください。

広告ビジネスについて

広告ビジネスとは、広告主の持つ商品・サービスを広く告げることを支援するサービスです。
広告主1社では、広く告げるだけの基盤(人、枠)を抱えていないので、そこを支援するのが広告を売る媒体社の役割です。
商品やサービスが売れること(コンバージョン)と、広告は直接関係ありません。
商品やサービスを広く告げるのが広告で、その先の「商品やサービスを買わせるのは販促」です。
また、広告自体はモノやサービスを売る目的以外にも、たくさん利用されています。(政府からのお願い、最近だと不良品回収等)
広告とは、あくまで認知を目的にして利用するものです。

広く告げる広告なのに、伝える人を絞り込む理由

広告を買う人の理想を言えば、商品やサービスを提供可能な全ての客に宣材を告げたいでしょう。
ただし、予算に上限があるのと、広告メッセージの効果には上限があるので、絞り込んだターゲットに対して、作りこんだメッセージ(クリエイティブ)を露出する必要があります。
商品・サービスの提供主体だけでは届けられない人達の中で、投資対効果が合うと思われる人達に、情報を伝える必要があるからです。
また、特殊な事情になりますが、一般の方々に伝えてはいけない情報の広告というのもあります。
例えば、医療関係者にしか見せてはいけない広告や、成人した人しか見られない広告など。
そういった理由で、広告を伝える先は絞り込まれています。

余談になりますが、予算やターゲットを考えずに接触回数だけ増やすと認知は増すという例があります。東日本大震災後にTVCM代替で流れた動画「ACジャパン あいさつの魔法」を10年たった今でも嫌悪感を持って覚えている人は多いはずです笑
https://www.ad-c.or.jp/campaign/search/index.php?id=558&sort=businessyear_default&businessyear=2010

広告でいう認知とは

一般的な認知とは以下の解釈です。

認知は「統覚」と「連合」の二段階にわかれた処理である。統覚は、風景などの知覚から形を取り出す働きであり、その形が何であるのかを判断する働きが連合である。

広告でいう認知とは「宣材を理解してもらう」までが含まれます。
下の2枚の絵を見てください。
1枚目の画像は、黄色い花の抽象画が家の壁に飾ってあることが分かります。

iOS の画像

この絵を見ただけだと何の目的の画像なのか不明だと思いますが、2枚目の絵は、その花の絵が8000円弱で送料無料で購入可能なのが分かります。
これが広告の認知範囲です。

花の絵

商品購入したい方は、以下のURLからどうぞ(私とお揃いですが笑)
https://www.etsy.com/jp/listing/942399687/yellow-wall-art-yellow-grey-print-flower

たまに、広告を見ただけだと何を伝えたいのか不明で「検索して調べてみたい」と思わせるキャンペーン広告もありますが、その後の検索行動と話題性を含めた認知となります。

認知に必要な情報はコンテクストによって変わる

コンテクストの認識度合によって、認知に必要な情報が変わってきます。

「コンテクスト」とは「文脈や背景」と訳されますが、言外の部分=「文化、慣習、知識、価値観」などのことを指します。「ハイコンテクスト」とは、「コンテクスト(文脈や背景)」が共通認識となっている状況であり、この場合には、すべてを言葉にする必要がなくともお互いに理解し合えるので、ハイコンテクスト文化と呼ばれます。一方、こういった背景が共有できていない場合には、すべて言葉で説明しないといけないため「ローコンテクスト」と呼ばれます。
https://www.trivector.co.jp/contents/?p=2493

1枚の画像や数秒の動画で認識させられる情報はそこまで多くないので、なるべく「ハイコンテクスト」なメッセージにした方が良いわけです。
「ハイコンテクスト」なメッセージで伝わるのか?それとも「ローコンテクスト」なメッセージにしないと伝わらないのか?ここら辺のコントロールは、広告においてとても重要です。
さきほど例示した花の抽象画も、よく絵を売ってる有名な画家がプロモーションツイートしたならば、値段や送料無料という情報が無くても「購入可能な新作が出たのかな?」と伝わるはずです。

例えば、このユニクロの広告。

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https://twitter.com/uniqlo_jp/status/1367308819139858434

「総額表示のタイミングで感謝を込めて値引きます!」と伝える新聞広告だと思われますが、前提として

・ユニクロというブランドを日本人はほぼ全員が知っている
 →新聞広告に目を通せる人であれば
・ユニクロでは多数の商品が1990円で売っている
 →店舗に行った人は下3桁が990円の商品が多いのを知っている
・2021年4月1日より総額表示が義務化される
 →新聞を読んでる層であればこの程度の知識はある

というコンテクストを利用して、このメッセージが作られています。
細かく書かれた文章を読まなくても、即座に理解が可能な、とても良くできた例だと思います。

お客様の状態に応じた広告の出し分け

企業からお客様との関係を整理した場合、潜在客・顕在客(見込み客等)・顧客(初回・リピート)と分けられると思います。
この一番最初に来る「潜在客」に購入・契約いただき「顧客」になってもらうことが「新規顧客獲得」かと思いますが、広告が担える役割は「情報を伝えること」までです。
ネット広告の潜在客とは「広告媒体側が持つ接触可能なユーザ」に対して「広告主が決めたターゲティング条件に該当するユーザ」が媒体社から見た潜在客であり、「知れば買う可能性がある属性を持つ人」と企業が考える人たちの群を潜在客と呼びます。
この潜在客に対して情報を与えることで顕在客にします
顕在客は商品・サービスを知った人のことを指します。
1つの例を出します。

◆伝えたい情報
①企業・ブランド名  → SONY(子会社のSIE)
②商品・サービス名  → プレステ5(PS5)が新発売
③提供機能、付加情報 → PS5、PS4用ゲームが遊べる、4万円程度
④上記で得られる価値 → 画質が綺麗で新しいゲームを体験できる
⑤購入関連情報    → ECや家電量販店で購入が可能

上記の情報を伝えるまでが広告の役割で、この情報を知って「買うか買わないかを決めるのはユーザ次第」です。
また、既にプレステ2~4、PS Vitaのいずれかを持っている可能性が高いので、ほとんどの人たちが顧客であると考えられます。
その場合、以下の二つだけ情報として伝わればOKなはずです。

②商品・サービス名  → プレステ5(PS5)が新発売
③提供機能、付加情報 → PS5、PS4用ゲームが遊べる、4万円程度

リピート購買を促すための広告での認知となります。

顕在客に購買を促す行為は販促

今のリマーケティング広告は、広告と名はついていますが、やっていることは販促です。
・買い忘れてませんか?
・興味もってますよね?買いませんか?
という行動喚起のメッセージであって、何も新しい情報を伝えていません。
ネット広告を含んだデジタル施策(メール、LINE、プッシュ通知、Web接客等)は行動喚起が得意であり、本来であればオプトインしなければいけない対象です。
メール、LINE、プッシュ通知、Web接客等はオプトインが必要なのに、ネット広告だけがオプトインしなくてもOKとなっていました。
最近では同意取得ポップアップが増えてきているので、近いうちに必須ルールとして変るでしょう。

余談ですが…
純粋な広告効果が測定可能に 電通デジタル、新評価モデル「True Lift Model」を提供開始
https://markezine.jp/article/detail/29238
こういった取り組みもある通り、広告の販促支援効果も、どこまで正確なものかは疑ってかかった方がよいでしょう。

ブランド広告と揶揄されているものを考えてみる

今のネット広告が刈り取り以外は意味がないすると、以下のケースでは「広告を打たないか、止めることになる」かと思います。

1.商品在庫がない
 → 供給不足で売りたくても売れない
2.必要な人は既に所有している長期サービス
 → 競合サービスと差別化要素も少ない
3.対象顧客が少ない
 → 対象顧客は認知済で、営業で回れる程度の顧客数、BtoB系

でも、発想を変えて「広告利用で何らかの情報を認知する」ならば話が変わると思いませんか?
例えば、以下のような利用方法が考えられます。

1.商品在庫がない
・供給不足解消の目途を広告でお伝えする(不満解消、転売購入防止)
・値上げのお願いや謝罪を広告で告げる(設備投資のためのお願い)

2.必要な人は既に所有している
・携帯キャリア:乗り換え時のために記憶に残す、芸能人でファン誘導
・生命保険:社名/サービス名を若者に良い印象で覚えてもらう

3.対象顧客が少ない
・対外的な認識を変える(対象外だった企業、採用したい人向けに印象変更)
・業界全体を伸ばしていくような取り組みを告げる

コンバージョンだけの計測で広告を打っている人達には、この発想は出てこないと思われます。
特に印象に残す広告・芸能人起用でファン誘導する広告は「クリエイターが趣味で作ってる」「受賞目的で作られた」等の批判を浴びやすいのかも知れません。
こういった批判をする人たちが、どこまで理解した上で、そのような批判をしているのか分かりませんが、私には認知のためにコンテクストを理解したメッセージをしっかりと届けようとしているように見えます。

まとめ

以前から思っていたことをザっと走り書きしたものなので、まとまりない文章となっておりますが、広告の認知について理解の一助になったでしょうか?
反論、不明点などありましたら、コメント付きでシェアしてもらえると嬉しいです。
では~♪

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