見出し画像

家康が現在の閉塞した日本の現状を生み出した元凶です。『徳川家康 弱者の戦略』

『徳川家康 弱者の戦略』は、弱者であるベンチャー企業が学ぶべき戦略を教えてくれるビジネス書です。

「中世的な被官関係:サービスとして家来扱いにしてもらい、権威付けや保護をうける」「三河の人たちが少年時代の家康を知らないことが、かえってカリスマ性の獲得にプラスに働いた」「競合相手となるべく棲み分け戦略をとる/棲み分けが無理とみた時にだけ、徹底して戦う」など、弱者であった家康が天下統一を成し遂げることができた戦略を知ることができます。

特に「信長:価値観もふくめ一元的に服従させる権力/秀吉:全てを呑みこもうとする権力/家康:棲み分ける権力」は、三英傑の権力のあり方により、その後の運命が決まったことを示しています。

「信長型:求心力が強く、急速に成長可能→ブラック化しやすく、メンバーが信長疲れを起こす」「秀吉型:強力な成長志向で拡大路線には強い→行き詰まると秀吉疲れの弊害が表面化する」「家康型:棲み分け路線→もっともサスティナブル」と、信長や秀吉は組織を疲弊させてしまいますが、家康の棲み分けは疲弊しにくい構造だったので生き延びたようです。

弱者であるベンチャー企業の経営者は、家康の棲み分けの価値観を利用してみてはいかがでしょうか。

 

「家康はこれ以上、他人や家臣に踏み込まないという境界線を、自分のなかで決めていた」「戦うべきときに戦わないと、求心力が失われ、家臣たちの離反が始まってしまう」「武闘派は強さゆえに戦いすぎて滅びます」などを通して、歴史的観点から現在の状況を変えるための視点がわかります。

特に「大岡事件:外部の人間には通謀など大きなリスクがある→昔から組織の中に居座っている人たちのほうが信用できる」は、家康が日本企業が世襲と縁故採用を重視する原因であることを示しています。

大岡事件が起きるまでは、家康は信長や秀吉よりも外部登用に積極的でした。

しかし、外部登用者が悪さをしたために、裏切られたと感じ、身内に特化した組織に変更したのです。

ある意味、日本の閉鎖的な環境を作った原因は、家康にあると言えます。

組織を発展させたいと考えているなら、日本の悪しき慣習を取っ払う必要があるでしょう。

 

オタクの視点から言うと、「追い詰められた軍事強国は、往々にして謀略作戦に傾いていく」に刺さりました。

この本によると、武田家の謀略作戦で松平信康、織田信長、明智光秀が命を落としたようです。

「家康による長男と正室の処刑」「本能寺の変」に武田の謀略戦が深く影響を及ぼしたのです。

オタク的には、戦国最大のミステリーが解けたようで面白いです。

 

#徳川家康弱者の戦略 #磯田道史 #文藝春秋

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?