大槻流「うたうこと」〜発声パターン①〜

「うたうこと」というタイトルを耳にして、発声に興味のある方ならピンと来る方も多いと思います。

音楽之友社から、昭和62年に出版されたスイスの音声学者フレデリック・フースラー著「Singen/うたうこと」という医学書のような発声や構造の専門書の本のタイトルだからです。

ドイツ語で書かれたこの本の翻訳を手掛けた大熊文子女史東京二期会を創始した8人の声楽家のうちの一人)に、何を隠そう私は芸大学部三年次から師事し、大学院に入ってからもドイツに永住された先生の元を追いかけて休学し、計8年間、指導を受けました。

画像1

【写真は私がドイツから帰国する際に大熊先生が開いて下さった食事会(右から二人目が大熊文子先生)】

私の中での声に対する考え方メソードのベースは大熊先生とのレッスンで培われ、更にその後はバイロイト音楽祭にも度々出演していた国際的邦人メゾ歌手小山由美先生から多くの生きた助言や気付きを頂きました。

幸運なことにキャリアの大半を世界中で歌っている数々の海外の歌手たちとの共演に恵まれて、現場で受けた感覚や反応などからも自らが取捨選択し学んで来た道が少なからず間違ってはいなかったのだと確信し、現在に到ります。

私は父親も声楽家で、父は3大テノールの一人、ルチアーノ・パヴァロッティを育てたテノールのアリゴ・ポーラ先生などイタリア人歌手に師事していたので、声楽を習い始める以前からオペラの本場、イタリアのエッセンスをたっぷり感じて育ち、家にはいつも歌や音楽が溢れていました。

留学様々な国籍の歌手たちとの共演を通じて受けた教えや教訓を点と点で結び合わせ、本場の声や音にどうすれば東洋の日本人が近づくことができるか、自身が大切だと想いキャリアの大半を掛けて実行し、同時に指導者としても15年間、音楽大学で生徒たちに実践確実に効果があると実証できたいくつかを、大槻流「うたうこと」発声パターンとして、ここに紹介して行きたいと思います。

ここから先は

2,582字
この記事のみ ¥ 500

頂いたサポートは今後の活動の為に大切に使わせて頂きます。応援どうぞ宜しくお願い致します。