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気になっていた「馬のお墓」を見つけた。

盆に花巻の実家に帰りました。


実家は農家。

墓参りは四か所。明治あたり以降の人たちのお骨が納められてる共同墓地の墓と、それより前の人たちが埋葬されてる家のそばの古い墓、あとは実家にいたニャンコやワンコたちの墓、そして「馬墓所(うまはかどこ)」と呼ばれてる馬の共同墓地に、順番にお参りします。

初代の人のお墓。元文という年号、1730年代あたり。近くの大本家から隠居して分家したとのこと。元をたどると武田家に仕えていて、その滅亡と共に甲府から逃れて来たらしい。

地域の馬の共同墓地「うまはかどこ」。どの家でも農作業のために馬を飼っていた時代から、やがて耕運機やトラクターの普及で飼う家も無くなって久しい。墓地もなんとなく荒涼とした雰囲気。それでも草刈りはされていて、数軒の家が毎年途切れずお参りをしている。


これらのお墓の他に、実はこの何年かお参りできていないお墓がもう一か所あるのです。なぜお参りできないかというと、場所がわからなくなってしまったのです。

祖父が生きていた頃、その墓にお参りするのは祖父の役目になっていました。他の家族は一緒に行かないので、詳しい場所を知らなかったようです。二十年近く前に一度だけ、家族の中で僕だけが、祖父と一緒にそのお墓に行ったことがありました。

田んぼの土手の薄暗い杉林の中に、小さな墓石が一つだけあったのを覚えています。それもまた「馬のお墓」でした。

昔、農作業中にこの林の木に繋がれていた馬が、木の周りを動いているうちに体に縄が絡まり、誰も気づかないまま窒息して亡くなっていた。大きく重い遺体を林から運び出すことをあきらめ、亡くなったその場所にそのまま埋葬した。

馬の墓に線香を供えながら、祖父はそう話しました。

一度だけ行った、道もない林の中の墓所。僕もいつしかその場所を忘れてしまいました。しかし祖父が亡くなったあと、家族にその墓のことを尋ねると、誰も詳しい場所を教えられていなかったことがわかりました。

林のどこかに、あの馬のお墓がある。

毎年お盆の頃になると気になり、あのお墓の場所はどこなんだろう、ということを話題にしました。ただ僕以外の家族にとっては、実際に見たこともお参りしたこともないお墓のことには強い関心が湧かないようでした。


すると今年、情報が入りました。近所の人が休耕田の畔の草刈りをしていたときに、林の中に墓石があるのを見たというのです。畔の草刈りをしていて気づいたなら、林のさほど深い場所じゃないということ。僕は林の中に目をこらしながら、その人が草刈りをしていたらしい区域の田んぼの畔を歩いてみました。

ありました。

笹と杉の木立の奥。古い小さな墓石が。


薮を越えて、墓石のそばへ。

墓碑銘、馬頭尊と読むのでしょうか。

よかった、見つかった、ごめんね、と馬に話しかけました。手を合わせ、またちゃんと毎年お参りするからねと伝えました。

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