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005 林あさ美「ジパング」(1997年)

作詞:荒木とよひさ、作曲:三木たかし、編曲:若草恵

実力派が前提の演歌の世界にもアイドルはいる。
例えば、八代亜紀も初期にはアイドル並みに野太い声の声援があったし、氷川きよしだってある意味アイドル的だ。
そこに、アイドル的なビジュアルを持った逸材が登場すると、本当にアイドル的な衣装を着せられたり、ポップス的な楽曲を歌わされたりもする。

林あさ美も演歌アイドル的なスタンスでデビューした人の一人だ。
青森県六ヶ所村出身。
幼少の頃から民謡に親しみ、あまりクセのない素直な声質ながら民謡のコブシを前面に押し出した歌い方は、土着的すぎず、適度なバランスで親しみやすさがあった。

デビューは20歳だった1996年。
整ったビジュアルの持ち主だったこともあってか、安室奈美恵が大ブレイクしていた時代に、ヘソ出しの衣装と少しギャルっぽいメイクで登場。
この時代らしいアイドル路線を打ち出し、水着のグラビアまで披露した。
しかし、紛れもない実力派だ。

デビュー曲の「つんつん津軽」は、ホーンセクションをフィーチャーした16ビートのファンキーな民謡といった感じで、なかなかカッコいい。
作詞:荒木とよひさ、作曲:三木たかし、編曲:若草恵という、ポップスも得意とするメンバーが手がけたことが功を奏した。

「つんつん津軽」と同じメンバーで作られたこの「ジパング」はセカンド・シングルで、ダンス/ファンキー路線をさらに推し進め、4つ打ち的なダンスビートに、途中でブレイクビーツまで入るというこだわりよう。
それなのに歌詞は江戸時代(?)の炭焼き木こりが主人公という謎の設定。
このミスマッチ感はかなり斬新。

歌唱はコブシは控えめながら、適度に民謡の色が染み出してくるのがいい。
そして、上手い。
声の響かせ方がやはりポップス系の歌手とは違うのだ。

しかし、林あさ美のアイドル路線はここまで。
これ以降の曲は王道の演歌路線へ。
アイドル路線を貫くというのは難しいものなのだろうか。
それとも、もともと話題作りで期間限定だったのか。

歌謡番組などではポップス(歌謡曲)のカヴァーもよく歌っていて、個人的にはそっち路線のオリジナル曲が多かったら、もっと広く人気が出たのではないかと思っていた。
残念ながら、2013年で活動停止。
実質引退状態なのが残念だ。


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