サルでもわかるNISA講座 その13「投資信託の目利きになる術 PART 2」

以前に金融リテラシーで一番重要なのは、「自分が取っているリスクに見合ったリターンを得ているかを評価できるかどうか」って話をしたけれど、それは投資全般でのことで、そこでのリスクというのは普通にイメージしやすい「マーケットリスク」以外に、「クレジット(与信)リスク」や「流動性リスク」ってのがあるんだな。そして案外、後2者が盲点になりやすいんだけど、NISA口座で投資信託を積立投資する場合には、それは気にする必要なし(積み立てではなくスポット取引する場合は、流動性リスクはある程度気にしなきゃだけど)。

そして「(マーケット)リスクの正体はボラティリティ」って話もしたけど覚えてるかな。その時はピンと来なかったかもしれないけれど、その話はここで重要になります。

投資信託の過去のパフォーマンスを評価する時に重要な指標は、トータルリターンとシャープレシオ。トータルリターンは文字通り、基準価額のプラスマイナスと分配金から信託報酬を差っ引いた投資家の取り分。5年間のトータルリターンが15%なら100万円の投資が5年間保有している間に115万円になって返ってきたってこと。シャープレシオは、そのトータルリターンからリスクフリーレートを引いたものをボラティリティで割った値。さあ分かんなくなってきたねw 「リスクフリーレート」ってのはリスクを全く取らないで得られるリターンと考えられてて、投資の尺度ではそれよりもどれだけ超過リターンがあったかってのが重要ってことなんだな。リスクフリーレートは無担保コールレートが使われるけど、「なんじゃそれ?」ってならなくても、現状のような超々低金利下ではそれはほぼ0%。つまりシャープレシオは「リターンを『ボラティリティ=マーケットリスク』で割った値」と覚えておけばいい。「リスク1単位あたりのリターン」ってこと。ん?分かんない?具体的に話そうか。100万円の投資が90万円になるかもしれないし、110万円になるかもしれないってのが「ボラティリティ10%」。リターンが10%なら、10%を10%で割って1.0ってのがシャープレシオの値ね。分母がリターンで、分子がマーケットリスクだから、リターンは大ききれば大きいほどよくて、マーケットリスクは小さければ小さいほどよくて、つまりシャープレシオってのは大きかろうよかろうなんだな。教科書的にはね。ところがぎっちょん!ってのが現実の世界だな。

シャープレシオを検索すると次のような例が出てた。ちょっと考えてみようか。

投信A: ある期間のトータルリターンが10.1%、リスクフリーレートが0.1%、同期間のボラティリティが10%

投信B:同じ期間のトータルリターンが19.1%、リスクフリーレートが0.1%、同期間のボラティリティが20%

「リターンが10.1%と19.1%を比較して、投信Bの方が儲かると考えてはいけません。シャープレシオを計算すると、投信Aは1.0、投信Bは0.95で、投信Aの方が効率のよい投資ということができます」みたいな解説があった。

なんか「シャープレシオ」なんてかっこいいものを出されて、これが高い方がいいんですよって言われると、「おお、そうか!」ってなるんだけど、投信Aの方がいい投資だとするには一つの前提が必要。それは「リスク量を揃えた場合」。つまりリスクが半分なんだからリスク量を同じまで許容できるとすると倍の量を購入することができるんだな。そうすると投信Aの方がリターンの期待値は高くなって、それが「効率のよい投資」の本当の意味。でも実際はリスク量で投資額を決めるってことはないよね。

先の例で言えば、それが100万円の投資だとして片や「ある時点では10万円損したし、ある時点では10万円儲かったけれど、結果10万円儲かった」投資と、片や「ある時点では20万円損したし、ある時点では20万円儲かったけれど、結果19万円儲かった」投資の比較なわけ。「それは過去のパフォーマンスであり、将来はどうなるか分かりません、さあ、あなたはどちらを選びますか」ってことね。

その判断には、色々な要素が加味される。長期間の投資であればあるほど、リスクは取りやすいのでより投信Bを選びやすいのに対し、比較的短期であればリスクは抑えたいので投信Aを選ぶべきとか、投資金額によっても金額ベースのリスクの許容量が異なるので、金額が大きくなればなるほど投信Aの方がより適してるとか。でも最後は、どちらのリターン vs リスクの特性が自分にフィットしているかを自分で判断するってことが大事。

実際の投資ではシャープレシオだけで投信のよしあしは見分けようがなくて、まずは投資対象が違えば、将来のリターンに対する期待は全く異なるってのは当たり前。日本株に投資する投信と米国株に投資する投信のシャープレシオを比較してどちらがいいというのは必ずしも正しくない(のだけれど、市場のパターンってのはある程度継続するので、全く意味がないとも言えない)。同じ投資対象の投資信託を比較する上ではかなり参考になるというのは正しい。そして重要なのは、トータルリターンとセットで見るということ。

トータルリターンとシャープレシオは過去の実績。だから「絵に描いた餅」。それで将来のパフォーマンスをイメージするんだけど、その際には前回「二の次」と述べた信託報酬も並べて見るべし。「どれだけリターンがありそうか、そのリターンを得るためにはどれだけリスクを取るのか」って方が投資でははるかに本質的なことだけど、それは未確定の事柄。それに対し信託報酬ほかの手数料は確定事項。手数料の多寡で投資先を選ぶのはナンセンスだけれど、それに注意することで確実にリターンを底上げできるってことはこれまでも言ってきたことだな。

ちなみに株のボラティリティってのは大体15%程度、シャープレシオは1.0以上であれば、かなり優等生の投資ってのはイメージとして持っておいた方がいいな。

ではまたまた。

(Face Book 2/1/24の投稿を転載)

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