見出し画像

「英語力」とは

 「ネーティブスピーカーに英語を教える」という、ちょっと変な経験をしたことがある。英語の授業を始めますと教壇に立つと、一番前の席にイギリス人の女の子が座っている。普段英語を使って生活している女子中学生に向けて、比較や受動態の話をするのだから、何だかきまりが悪い(笑)。当時は、何とも表現できない、変なプレッシャーを感じていたのを覚えている。

 ではこの生徒が高校受験のための模擬試験を受けたとき、英語で常に100点満点が取れるのかというと、決してそうではなかった。無論「悪い」と印象付けられるような点数ではなかったものの、彼女より点数が採れる日本人もたくさんいたということだ。では、彼女の「英語力」は、彼女より点数の高い日本人よりも「低い」ものなのだろうか。

 その言語に対する能力は「聞く・話す・読む・書く」の4技能に代表される。誤解を恐れずに言うと、「聞く・話す」は言語的な能力であり、「読む・書く」は学問的な能力と言えるだろう。私たちが漠然と耳にする英語力とは、言語的なものに寄った能力を指しているように思える。そうであるならば、日本人が6年(+α)という長期間をかけて英語を学習しているのにもかかわらず、英語力が低いと言われていることには納得がいく。

 時代の流れを考えると、英語教育自体がコミュニケーション方面にシフトしていくことは、決して間違ってはいない。小学生英語必修化。現場の先生方は、正しいアプローチができているのだろうか。世間で言われる「受験英語」を否定し、英語民間試験を導入すれば、日本人の英語力は高まるのだろうか。

 プロセスも然り、英語教育の「ゴール」について、現場レベルでの議論や、今までの受験体制の「正しい」部分についての検証もあってもよいはずだ、と僕は思う。

石巻かほく 2020年3月22日(日)号 つつじ野 より

※「ネーティブ」という表現については「ネイティブ」と書きましたが、記者からの修正が入りました。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?