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コミュニティにおける「自走」を再定義する

こんにちは!
コミュニティデザイナーのてぃらです!

今回はコミュマネの皆さまが目指したい状態であろう、コミュニティにおける「自走」について考えていきたいと思います。

「自走」というとコミュニティが運営の手から離れていても、メンバー主体で意見交換やイベント企画が進むことで勝手に盛り上がる状態をイメージする方が多いかと思います。

事業的な観点で言えば、「サービスにおけるコアなファンが勝手に次なる顧客を連れてくることで、営業活動も自走する」というような超低コスト最強マーケティング戦略と捉えているようなマーケターも多いことでしょう。

しかしながら、自走を実現しているコミュニティはまだまだ数少ないのが実状のところであると思います。

コミュニティという概念に注目が集まる一方、導入したものの実現に失敗したため幻滅してしまったという声も多く聞きます。

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コミュニティの成功とは切っても切り離せないものである「自走」。

この定義について、今回はより深く考察できる時間にできれば嬉しく思います。

それではいきましょう!

コミュニティが完全自走することはない

コミュニティに幻滅する一番の理由は「過度な期待」を持ちすぎていることにありますが、この過度な期待を生み出す要因として完成されたコミュニティは何もしなくても勝手に自走するものであると捉えてしまうことが挙げられます。

しかし色々なコミュニティを運営する中でわかったことはコミュニティにおいて明確なルールが存在しないまま完全自走することはそもそもありえないということです。

国家をイメージしてみてください。

現在の日本で暮らす上で私達は当たり前のように自由に発言し、自由に食事をし、自由に友人と交流することができます。

これは「日本国家」という1つのコミュニティの下で私達は自由意志のもと生きる権利があり、好きな仲間とイベントを自由に企画します。
言い換えれば日本という超巨大コミュニティの中で自走して生きていることができていると言えます。

ではなぜ私達は自走して生きることが許されているのか。

それは法が存在し、制度が存在し、文化が存在しているからです。

そして上記の要素から構成している秩序の元、私達には自由が与えられています。コミュニティにおいても同様に「秩序」という抑止力が働かない限り良質な自走が実現することはありえないのです。


■無法国家ランキング
https://rocketnews24.com/2016/10/26/817039/

これを見ると面白いのが法の支配ランキングが高ければ高い程、先進国や幸福度が高い国が該当しているという事実です。
つまり、国家コミュニティにおける安定的な自走を実現するには「法」を起点とした秩序形成が不可欠であると捉えることができます。

話を本題に戻すと、コミュニティにおける「自走」と「秩序形成」は切っても切り離せない関係にあり、秩序のある自走は良質な文化や多様性、居心地の良さを生み、秩序のない自走はカオスを生み出すのです。

このようなことからコミュニティを健全に自走させるためにはその土台として秩序を形成する必要があること、そしてその秩序を保つ運営者が必要であることが言えるでしょう。

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つまり、ほったらかしにしていてもコミュニティが自走し続け、コミュニティ活性化や経済効果が見込まれるという認識をまずは改めることから始めることが大切です。

コミュニティ自走に必要な3要素


ちょっとイメージしているコミュニティの話から逸れて政治学的な話も混ざってしまった前章でしたが、ここからは良質な交流やマーケティングの機能と併せて経済効果を生み出すための自走コミュニティをつくる方法について考えていきましょう。

ここではコミュニティ自走における必要な要素を3つに分けて考えていきます。

要素① 世界観
まず1つ目は世界観です。
これはコミュニティを立ち上げる際に立案者が掲げるビジョンやパーパス、そして「こうあって欲しい」という願いから形成されるものです。

つまり、コミュニティビルダー(経営者などの当事者)が掲げる思想が後の参加メンバーが熱狂する世界観となり、文化となる訳です。

特にコミュニティをマーケティングの一部として組み込む場合は「口コミ」を生み出し、NPSを向上させる必要がありますが、この「熱狂」を生み出すためには確固たる世界観の確立が必要です。

「この素晴らしいコミュニティの価値をもっと広めたい」と思える文化を創造するためには初期段階におけるメンバーが熱狂するような世界観の確立は必須になるでしょう。

要素② 共利

2つ目の要素は「共利」つまり、そのコミュニティに所属するメンバー全てにとって共通の利益が存在することが必要になることです。

例えばコミュニティに所属しているA君は「山に行きたい」といっており、B君は「体を動かしたい」と言っているとします。

その2人にとってどちらのニーズを叶えられるイベントは「登山に行く」といったようになりますが、まさにコミュニティでは所属しているメンバー全員が「それだったら納得」と言える共通の利益を定期的に提供する必要があるのです。

勿論コミュニティを立ち上げるにあたって「共通の目的」や「共通の世界観」が存在するものではあると思うのですが、長く熱量高く自走させるためにはそれ以上にメンバー全員にメリットがある利益を生み出し続ける必要があります。

コミュニティを自走させる大前提として所属しているメンバーが能動的であることが必要です。

モチベーション高く能動的にコミュニティ運営に参画してもらうためにも所属するメンバーにとって動機付けとなる利益の提供は運営側の責務になるでしょう。

また、共通の利益を見出すためにはメンバー同士の意見の調和というプロセスを踏む必要があるため、これは運営サイドの力量が試されます。

要素③ 秩序

3つ目の要素は秩序です。

最初の章でも述べましたように、秩序のある自走は良質な文化や多様性、居心地の良さを生みだしますが、秩序のない自走はカオスしか生みださないのです。

いくら世界観が確立していても、自走における共利が存在していたとしても、秩序のないまま自走を促してしまえば途端にコミュニティは崩壊してしまいます。
※事実slack上は盛り上がっているように見えても、実は裏で誹謗中傷が発生していたりするコミュニティは数多く見てきました

このことからコミュニティにおける治安維持は必須要件となることが言えるでしょう。

私の経験からコミュニティにおける秩序形成は大きく「制度」「ルール」「民度」の3要素から成り立っており、例えば制度であれば「一定数以上意見提案をしてくれるメンバーは企画会議に参加できる」、ルールであれば「slackのAチャンネルでは〇〇のことは発信しない」、民度であれば「コミュニケーション・技術力が〇〇レベルではないメンバーは入会させない」などを挙げられます。

こういった細かな工夫がコミュニティ全体の秩序の創出につながり、その先にコミュニティメンバーにとっての自由や多様性ある文化が生まれていくのです。

※まとめ

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自走までの手順について


それでは待ちに待った自走するコミュニティをつくる手順について先ほど述べた「世界観」「共利」「秩序」の3要素を絡めて説明していきます。

まず、順序を図にまとめたものが下記になります。

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コミュニティ創出における①立ち上げ(ビルド)→②整備(デザイン)③統制(マネジメント)の3フェーズの中で、「自走」が当てはまるのはデザイン~マネジメントのフェーズにおける最低限度の関わりでもコアメンバーを起点に企画が生まれているかつ、メンバー同士の多様性が尊重され、能動的な交流が生まれ始めている状態と定義します。

①立ち上げ(ビルド)
立ち上げフェーズでは「世界観」の要素をいかに創り上げるかが鍵になります。創設者であるコミュニティビルダー(経営者等)の確固たる信念や願いを言語化し、かつ色やアイコンなどのビジュアルに落とし込むことで、浸透度の高い世界観を創り上げることができます。

世界観の要素なしでは「熱狂」を生み出すことはできません。
もしコミュニティをマーケティングの一部として利用したい場合は、初期段階における「世界観」を唯一無二のものとして生み出し、かつメンバーが理解できるわかりやすいビジュアルに落とし込むことが必要になります。

①整備(デザイン)
整備フェーズでは「秩序」と「共利」を創り出すことが重要になります。
この領域がいわゆるコミュニティデザイナーの役割範囲になります。

コミュニティビルダーが生み出した強烈な世界観を長く続くものとし、秩序として確立させ、かつメンバーにとっての共通の利益を可視化することに対してコミュニティデザイナーの手腕は試されます。

どんなメンバーをコミュニティを入れるのか、もしくは入れるべきではないのか、混在するメンバーの多様なニーズをどう1つにまとめるか、またそのニーズを満たせる施策はなんなのか、そしてその施策はコミュニティパーパスと合致しているものなのか、あらゆる要素を中庸的な立場で捉え、再現性の高い仕組みに落とし込んでいくことがこのフェーズでは求められます。

地味で必然性がないようにも見える整備のフェーズですが、その後の「統制」のフェーズをより工数負荷が小さく持続性の高いものにするためには整備の段階でメンバーのニーズや属性、そしてコミュニティ運営におけるプラットフォームのルールを明確に定義しておくことが必要になるわけです。

③統制(マネジメント)
最後に統制のフェーズですが、①立ち上げと②整備のフェーズが上手く昨機能していればこのフェーズにおいて心配することは特にありません。

統制の役割を担うコミュニティマネージャーが①、②のフェーズで出来上がった世界観・秩序・共利に沿ってコンテンツ提供や運営、必要によって微修正を行えば良いのです。

ただし、1つだけ気をつけるべき点は統制の立場であるコミュニティマネージャーは決して「世界観」「秩序」「共利」に反してはいけないということです。

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例え内閣総理大臣という国家を運営する立場であったとしても法を犯してしまえば罰を受けるのと同じように、コミュニティにおいてもあくまで統制を実現させているのは統制者以上に「枠組み」であるべきなのです。

これは歴史的な背景から結論が出ている内容ですが、まずは原理原則としてコミュニティマネージャーは「世界観」「秩序」「共利」に基づいてコミュニティを運営すべきであるというマインドを持つことが大切になります。

※各立場の役割
■コミュニティビルダー
「世界観」をつくる。
自分の言葉であり、心からの願いであれば何でもよい。
ビジュアル化が難しければコーチングを受けたり、デザイナーに頼むなどしてもOK。

■コミュニティデザイナー
「秩序」と「共利」をつくる。
メンバーの意見をヒアリングし、中庸的な立場でコンテンツ設計を行う。
同時に提供価値を明確にし、プラットフォームにおけるルールを確立する。

■コミュニティマネージャー
「世界観」「秩序」「共利」の名のもとコミュニティを運営する。
上記3要素のアップデートの責務を担うと同時に、これらの要素から反した統制をすることはあってはならない。

まとめ


いかがでしたでしょうか。

簡単にお伝えしたいことをまとめると

・秩序のない自走は自走ではないこと
(完全自走に夢を見すぎない、無理やりメンバーに運営を任せない)
・自走には「世界観」「秩序」「共利」の3要素が必要であり、これらを無視した自走は経済効果はおろか、持続的なものにはならない
・自走には明確な「手順」が存在する


ということを今回の記事で知って頂けたら嬉しくおもいます。

まだまだ成功事例の少ないコミュニティの領域。

これからも知見を深めてより再現性のあるフレームワークとして生み出すことを続けてみます。

今回も長くてわかりにくいであろう記事を最後まで読んで頂きありがとうございました!


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