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イエローストーンに行った話。

音楽と記憶は、紐付きやすい。その頃聴いていた音楽を聴くと、即座にその時の空気感を思い出したりします。オーストラリアでホームステイしてた時はAvril Lavigne、手術・入院の時はTaylor SwiftとAriana Grande。不思議とメジャーどころの洋楽女性アーティストばかり。普段はどっぷり日本人アーティストばかり聴いてるんだけどな、不思議。今回も帰りのフライトの間ずっと機内オーディオでCarly Jepsenを聴いてたので、この先Carly Jepsenを耳にする度イエローストーンを思い出すんだろうと思います。

2019年9月、私はアメリカの国立公園の1つであり、世界初の国立公園であるイエローストーン国立公園に1週間ほど行ってました。一般社団法人日本インタープリテーション協会が実施する「日米インタープリテーション研修会」に参加する形で。インタープリテーション(自然解説)についてはここでは割愛しますね。

もちろん研修の一環で行ってるし、日米を謳っているくらいですから、アメリカの国立公園局の皆さんによるバイソンの保護活動やインタープリテーションに関する講義をしっかり受けさせていただきました。とてもとても贅沢で有意義な時間でした。現役インタープリター(自然解説員)ではない私が参加してもよいのかな?と思うほどの内容だったけど、でもまあいいいか。ちゃんとこうやって世に還元すればよしとしよう。

収穫は、地球そのものを感じられたこと。

では、私は一体ここで何について書くのか。とにかくイエローストーンというとてつもなく広く、国立公園となった100年前と同じ景色の中に身を置くことができて、地球を感じることができた、そのことについて書きたいと思います。

広大な大地は、アメリカ以外でも体感できるものです、間違いなく。世界方々を巡った人に聞けばきっと、さまざまな地名が出てくるはず。「広大な大地」で検索すれば、相当の情報を得られるし、写真も豊富に出てくる。でも、それはある意味、外付けHDDみたいなもの。自分は行かなくても世の中にはすでに情報はあるという人もいるけど、それは切断したらアクセスできないもの。自分で、足運んで、五感使って体験して、第六感も時々使って(結構大事)、そうしたら自分の中に根付くってものがある。内臓HDD。自分の中にあるから、自分で出し入れができる情報。もちろん諸事情で直接足を運べない人もいる。でも、ネットで見ればいいじゃん?みたいなこととは、そもそも違う話。

何が言いたいかというと、情報は至極個別なものだということ。ネットに漂う情報は自分のものじゃない。誰かの書いたレポートを読んでも、結局その情報に血を通わせられるのは書いた本人。もちろん読み込んで読み込んで自分のものにすることはできるとは思ってます。私にとって「広大な大地」としてランクインするのはイエローストーン。他にもあるよって言われるかもしれないけど、今のところ圧倒的なインパクトを残しているのが、今回見てきたイエローストーンということです。

植物派ですが、今回は動物も面白かった。

何言っているか分からないと思いますが、私は学生の頃の専攻が植物生態学で、小学生の時からすでに森林に関心を寄せてきました。卒業後もインタープリターになったり、日本野鳥の会で働いたり、比較的自然界隈でウロウロしてきました。流石に社会に出てからは、植物だけという訳にもいかず、植物も動物もその他いろいろなことを題材に仕事をしてきましたが、やはり個人として非常に興味津々でならないのが森林や植物なんです。なお、野鳥の会時代は、あまりに鳥を覚えないもんだから、会の中にいる"鳥の素人さん代表"みたいな扱いになり、「これ、例えば鳥を知らない人だったらどう思うかな?」という質問にご意見番のように答えていたほどです。褒められた話ではないんですけどね。それくらい植物派です。

今回植物として興味深かったのは、宿泊した大きなロッジ風ホテルold faithful innの建材にもなったロッジポールパイン(松)。日本のように植生豊かというのとは逆で、どこもかしこもロッジポールパインだらけ。そして、ここでは落雷による山火事は珍しいことではなく、また人為的に消火することもしないそう。となると、結構燃える訳です。実際に園内移動していると、ここも焼けたんだなってところはいくつか見られます。でも、面白いのは、火事による温度上昇で松笠が開くというのですよ。つまり、火事が起きなければ種子は弾けないということ。また、火事で焼けた樹木は堆肥となる。地面に日が射し込みやすくなり、芽が育ちやすい。自然ってうまくできてるんですよね。特に一度根をはったら動くことのできない樹木が、それぞれに工夫を凝らしていることが大変興味深いんです。だから植物派(しつこい)。

とは言っても、今回は大物の動物もたくさん。バイソン、エルクは何度でも登場したし、オオカミも望遠鏡越しに見ることができました。野生のグリズリーにはお目にかかれなかったけど、会えた動物も会えなかった動物も全てご縁ですから。動物を見てテンションが上がることの多くない私でも、やっぱり面白いと思いました。

バイソンはもうね、たくさんいる。大地が広いから、バイソン自体も大きいのにそこまで大きさを感じさせないんだけど、でもやっぱり大きい。バイソンが群れになって、道を歩いていたり道を遮ったりすると、bison jam(バイソン渋滞)もよく起きる。なんか車が詰まり始めたら、大抵これ。

なお、オオカミは人間の手で再度導入されたことで有名(この辺りはいろいろ調べると出てきます)。人間によってオオカミが駆除され、生態系がどんどん悪化。鹿が増え、植生は荒れ、日本でもよく聞く話です。でもイエローストーンでは、これに対してオオカミを放ったんです。とんでもなく広大な敷地であり、人家や牧場はとても離れているイエローストーンだからこその策とも言えますが、兎にも角にもこれが功を奏して、増えすぎた鹿は適正の数になり、植生も回復、いろいろな動物がまた見られるようになったという話。私が望遠鏡越しに見たオオカミは豆粒サイズで、ひょっこひょっこ歩く様はイヌみたいで可愛かったけど、そんなオオカミたちが立役者ということなんです。

地球が生きている感じがする。

イエローストーンには、世界の半分近くの間欠泉があると言われています。間欠泉とはある周期で吹き出す熱水や水蒸気。これこそ一聞は一見にしかず。見ないとわからない。ちなみに私温泉大好きなんですが、これを使った温泉施設的なものは(ほぼ)なくて、至る所にある様子を見て回る感じ。でも、なんかもうその様にひたすら生きている地球を感じて静かにワクワクしてしまう。そしてその名残であるマンモスホットスプリングも壮観。

本場のレンジャーに出会う。

インタープリテーション(自然解説)研修会なんだから、そのあたりの話も入れた方がいいんだろうけど、とりあえずたまたま解説の場に出くわしたのが感動だったので、こちらをどうぞ。やっぱりレンジャー、カッコいい。子どもたちの憧れの職業になるのも頷ける。私が中学生の時に「レンジャーになりたい」と言ったら、みんな戦隊モノを想像するから、それじゃないよって訂正するのさえ面倒になったのを思い出す。

ほぼ間違いなく、一生に一度のホテル。

最後に泊まったお宿について。如何せん、どでかい公園のため一回あたりの移動距離が半端ない。宿も一箇所固定でそこからいろいろな場所に繰り出しました。old faithful innという1904年に造られた世界最大級のログハウス!外も素敵。ロビーもレストランも部屋も素敵。予約を取るのも大変だそうで、泊まりに来ているお客さんも、頻繁に来るというより、ロングステイを楽しむ感じ。優雅な時間が流れていましたよ。これもイエローストーンの面白さの大事な要素だったと思います。

イエローストーン行きも、全ては縁だと思ってる。

イエローストーンは、この程度のレポートに収まるようなスケールではないです。載せた写真も撮ってきたものうち、何十分の1でしかないです。でも私の内臓HDDにはまだまだたんまり入っているので、いつでも取り出せます。あぁこんなの見たなぁとか、これはこうだったなぁとか思い出すことができます。

「私は地球に住んでいるんだな」と実感することができたイエローストーン。もちろん最初からそのつもりではなく、旅を終えてみたらそんなことを実感していました。100年以上前と同じ景色を見られることが感動で、そのまま想像を膨らませるのも贅沢でした。これから先もこの景色が続いてゆくことを思うと、またなんとも幸せな気持ちになれました。

たまたまスケジュール的にこの研修会に参加できたこと、その行き先がイエローストーンだったこと、そこで出会えた動物、出会えなかった動物がいること、悪天候で見られなかった景色があること、そして何より一緒に行った個性的な面々、その時だけの縁。面白いものです。

ということで、一旦ここでおしまい。アメリカの国立公園には他にも行ってみたいと思いました。スケールのでかい風景が好きなのでね。その時はまた書きます。きっと。

*写真はこちらでもどうぞご覧ください!

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