現場と本部のコミュニケーション

私は駐在員として、子会社で本社へのレポーティングの役割を担っていた経験がありますが、他の駐在員ともよく話の話題に上がるほど、多くの企業でこのコミュニケーションがうまくいっていない実情があると考えています。

散々多くの人と語り合ってきたトピックなので、あまり文章にするつもりはありませんでしたが、福島原発事故発生後の官邸、東電本店、福島第一原発の3者間でのコミュニケーションをThe Daysというドラマを見る中で共通点を感じ、文章にしてみたくなりました。

当時の首相の判断として印象に残った点が2つあります。1つ目は原発事故発生時に福島第一原発へ訪問した事。2つ目はレポーティングラインを福島第一原発⇒東電本店⇒官邸から福島第一原発⇒東電本店・官邸に変更したことです。

どちらの判断も現場の実情を正確に把握するという観点からは、適切な判断であったと思います。また、問題発生時のコミュニケーションの非効率性から問題に対する意思決定機関としての官邸がタイムリーに適切な意思決定ができていなかった事や、現場の指揮官が本店に対して適切なコミュニケーションができていたのかという部分において懸念が残りました。

私が思うに、一番の問題点は信頼感の欠如ではないかと思います。任せて任せずという言葉がある通り、本部は現場に裁量権を与える勇気が必要な場面があり、逆に現場は本部に対して情報を上げる必要性があります。

この両方の機能が存在する事で、お互いに強み・弱みを補完しあえる関係となり、組織としての力を発揮する事が出来ます。

当時の首相は現場の実情をより正確に把握するための行動をとった後は事件発生時と比較して、考え方や行動が変化したように見受けられます。これは、現場に対する信頼によってコミュニケーションの質が上がったのではないかと私は勝手に解釈しました。

私はこのようなコミュニケーションの構造で仕事を進める経験を駐在員時代に経験しました。お互いに相手の視点に立って物事を考え、コミュニケーションができれば、もっとうまくいくんだろうと思う事もありましたが、やはり、どちらの話をするかによってお互いの心の持ちようは大きく変化します。

このような構図は、現場の仕事をテーマにする際に発生するものだと考えています。福島原発事故では、話の場所は福島原発でテーマは原発関連になります。こうなったときに、現場に知識面での優位性が発生する形になります。

同様に駐在員の場合も話のテーマが現地の話になると、現地の実情を理解していない本部からの意見等、耳を傾けたいと思わないケースが多いかもしれません。

しかしながら、問題は最終的な責任は誰が被るのかや現場のみで動いてしまったときに孤立するというデメリットを現場は見失っている事が多いと言えます。これは無意識によるもので、現場は常に短期的な思考に陥りがちやすいという環境的な側面も影響していると言えます。

逆に本部においても、問題解決のために最善の行動をとり、適切な意思決定を行う事が必要です。そのため、現場の声を無視した行動は良い結果をもたらすことが難しくなります。本部は現場から率直な声を吸い取る義務があり、そのための環境づくりに努力する必要があります。

このような緊急的なコミュニケーションの構造においては、冷静にお互いの役割を理解した上でのコミュニケーションが必要になるのではないかと改めて思いました。

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