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扁桃腺取ってください

「夜中のいびきが大きく、家族に嫌がられるから、扁桃腺を取ってください。」患者さんが訴えます。しかし、病院ではきちんと基準があって、それを満たさないと取れません。

睡眠時無呼吸症候群の診断基準があります。

いびきが大きいだけでは病気になりません。「ガーゴー」いびき音の後に10秒以上の呼吸停止が必要です。1時間あたり10秒以上の呼吸停止が30回(2分に1度は呼吸が10秒止まる)で、手術を考え始めます。20回以下は治療が不要です。20回を超えたら、歯科で下顎の噛み合わせを直すスプリントを作ってもらいます。ダースベーダーのようなC-PAPは、独身で一人で寝ている人には勧めますが、夫婦で寝ている人には勧めません。隣でC-PAPつけられたら、私なら夫婦別の寝室にします。毎月5000円、年間6万円の医療費も高すぎます。1度つけたら、ヤメられないのが問題です。治療するなら、1回の扁桃腺手術、が良いと思います。

写真のような検査を睡眠中にする必要があります。鼻に管をつけるタイプの機種では、よく外れて検査が失敗するので、当院では、胸と指に貼り付けるだけの機種を選びました。

最近、話題になっているのは、子供の睡眠時無呼吸症候群です。子供の診断基準では、呼吸停止が10秒に至らなくても2回止まれば無呼吸です。しかも、1時間あたり10回以上あれば、重症と定義されてしまいます。基準がゆるいのです。

この基準だと、多くの子供が無呼吸症候群になってしまいます。就学前の子供は、いびきをかくのが普通です。扁桃腺も大きいです。扁桃腺は口から入ってくるウイルスや細菌をひっかけて殺しています。意味があって大きくなっているのに、取って良いのか疑問です。保育園で集団生活が始まって、バイ菌にさらされるので、扁桃腺が頑張って働いて大きくなっています。いびきが大きいからという理由で摘出してしまうと、後には戻れません。子供には,まず保存治療をすすめています。多くは鼻炎もあって、鼻が詰まっているので、抗ロイコトルエン剤と点鼻薬で鼻の通りを良くすると、いびきが小さくなります。小学校高学年になっても、いびきが大きい場合に、ようやく手術を考えます。

診断するためには、写真のような無呼吸の検査をしなくてはなりません。しかし、小学校の子供に検査は大変です。嫌がって器械を外してしまって検査が失敗します。検査ができる年齢になったら、きちんと診断して、適応を満たしたら扁桃腺の手術を検討します。

高度の無呼吸があると,苦しんで息を吸うために,胸の真ん中が凹んでしまう(陥没呼吸)子供がいます。これは例外的に,小さい子供でも手術します。自分の娘が4歳の頃、いびきが大きくて胸が陥凹しました。さて困った。娘の手術は手が震えます。しかし,薬をきちんと毎日飲んだら、いびきは軽くなり,小学校に上がる頃には、自然に治りました。手術しなくてよかったです。

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