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子供の扁桃腺とアデノイド、取る?取らない?

「扁桃腺とアデノイドが大きいから、手術で取ってくだい」開業医から依頼されます。いびきが大きくて、母親も心配して、手術に前向きの家族もいますし、子供に手術なんて必要なの?と半信半疑の親もいます。

昭和の頃は、扁桃腺が大きいだけで「大きいから取ってしまえ」という、医者も多くいました。令和の今は、ガイドラインに基づいて適応を決めています。

そもそも、扁桃腺とアデノイドは意味があって大きいです。保育園で風邪に負けないよう、外から入ってくる細菌やウイルスを、大きなアデノイドと扁桃腺で捉えて退治しています。気管支炎や肺炎にならないように、わざと大きくしている作戦です(表題の写真)。

中田誠一:口腔咽頭科 2016年 29巻 1号より転載

アデノイドは4歳が1番大きい時期で、その後、小学校高学年までに消えます。小学校に上がる前が、いびきをかく時期です。何歳で、どのタイミングで手術をするか、手術をしないで様子を見るか、その子に合わせて考える必要があります。

397人の無呼吸いびきの子供を、2つのグループに振り分けて、1)扁桃腺とアデノイドを手術、2)何もしない(薬は飲む)で、半年後に、いびきが治った割合を調べました。アメリカの大規模研究です。

2013年にアメリカで行われた、アデノイド扁桃腺とる?取らない?試験

結果は、手術すれば、79%でいびきが治りました。しかし、手術しなくても自然に、46%の子供は治りました。手術すれば治るじゃん?という医者の意見もあるでしょう。しかし、約半数は手術が不要なので、手術はやりすぎという意見が大半でした。まずは半年、手術しないで経過観察(抗ロイコトルエン薬内服と点鼻ステロイドは併用します)、それでもよくならない時には手術すべきと、アメリカのガイドラインは決まりました。

さらに、手術後にアデノイドが再増殖する割合を調べると、実に40%の子供で、1年後にまた大きくなっていました。アデノイドの切除の効果は限定的だと分かって、手術すべきです。

「大きいから」というだけで、手術する時代は終わりました。ガイドラインに沿って、医学的に必要な場合に手術を選択します。

中耳炎を繰り返す時にも、アデノイド切除することがありますが、ガイドラインで厳しく適応が決められています。大きいからと言って安易に切除しても、その効果よりも、全身麻酔と手術のリスクが大きいからです。

急性中耳炎ガイドライン2018より抜粋:アデノイド切除術は、反復性中耳炎の頻度を減少させることはなく、予防効果もないとされている。

小児滲出性中耳炎ガイドライン2022より抜粋:初回の手術で、アデノイド切除のリスクを侵すことを推奨しない。2回目手術以降、チューブ留置にアデノイド切除の併用は認められる。

患者さんに説明するパンフレットです。PSGのかわりに、ビデオ記録で評価する方法も載せています。親御さんに評価してもらって、手術するか決めています。

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