「自分には突出したものがない」と語る2人の主将の突出している点について
「何かが突出したタイプではないと思っているので、平均的に能力を高めていければと思う」
先ほどたまたま見つけた記事に載っていた言葉だ。W杯予選を戦うサッカー日本代表での序列争いを受けての藤田譲瑠チマ選手のコメントだったのだが、あまりの既視感にちょっとびっくりしている。(引用元の記事は下記リンク先)
何がびっくりって、今から7年前、五輪代表主将を経て同じくボランチとしてのA代表定着を目指して奮闘していた頃の遠藤航選手が、実は全く同じことを口にしていた。
「俺の場合、何かが突出してるってタイプじゃないんで、これから生き残っていくためには全ての平均値をどこまで上げられるかが勝負っすね」
当時、出会ったばかりの遠藤選手との会話の中で特に印象的な言葉のひとつだったので、彼がそう語った場面も含め、今でも鮮明に覚えている。
おそらくメディアの取材でも何度か同じようなことを口にしていたと思う。
その後ドイツでデュエル王のタイトルを獲得したことで「遠藤航=デュエル」と見なされるようになり、「突出した強み」を持つ選手と広く認知されるようになったけれど、当の本人は元々、今の藤田選手と同じ考え方・ベクトルで自身の活路を見出そうとしていたわけで、「デュエル王」はあくまでその結果だった。
なので、今は「何かが突出したタイプではない」と自認している藤田選手もまた、数年後には何かで明確に突出した存在として知られているんじゃないかしら、と、ふと思わずにはいられなかった。
いずれにしても2人に共通しているのは、何かに突出することが大きな意味を持つ世界で冷静に己の姿を見つめ、それを否定的に捉えることなく自身の生きる道を見定める冷静さだ。
ご本人達は謙虚に語っていても、自己やその置かれた状況を冷静に見つめる分析力や、そこで得た認識をベースに努力の方向を的確に判断し落ち着いて実行する力、すなわち知性という点において、そもそも2人とも突出していたことは間違いないだろう。
若い選手達で構成される五輪代表において、この両名がいずれも主将を任されていたことは、決して偶然ではないと思う。
既視感を伴う印象的な一言で、勝手ながら藤田選手の今後がとても楽しみになった。
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