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2014年夏、スペイン ア・コルーニャ ZARAが生まれた街~「ユニクロ対ZARA」執筆エピソード①

世界でファストファッションブームを起こしたH&Mと各国のローカルチェーンの対応をウォッチするところから始まったインスピレーショントリップ
日本国内においても、前回の香港視察までの海外においても、H&Mと世界トップ争いを繰り広げる、ZARAの強さというものを目の当たりにして来て、
両者の定点観測を繰り返す間に、僕の気持ちは、むしろ、ZARAの凄さの方に傾きかけていました。

そんな矢先、ありがたいことに、日本経済新聞出版社さんから、日本のユニクロと世界のZARAを比較する書籍を執筆してくれないかという依頼を受けました。

ご依頼の背景には、先に発売された「トヨタ対フォルクスワーゲン」という自動車業界のビジネス書が良く売れ、それに続いて業界別に2つの企業を比較するビジネス書が面白いのではないかという企画が持ち上がっていたそうで、当書籍はその中の候補のひとつだったそうです。(ちなみに拙著「ユニクロ対ZARA」と2014年11月に同時に発売されたのは「キリン対サントリー」でした)

海外企業取材アポイントメントの苦労

日経さんから執筆のご依頼を受けたのは7月、出版は11月と決まっており、執筆期間は3カ月しかありません。もちろん、こんなせっかくのチャンスを逃す手はありません。通常業務の空き時間を使って、1冊目の本を執筆した時のように、週間スケジュールを立てて書き始めました。
おかげさまで、業界の知人経由で多くのユニクロ、ZARAの関係者の方々(主にOB、OG)にインタビューをさせて頂く貴重な機会を頂き、長年ウォッチして来た両社の資料や過去数年間に渡って行っていた両者の店舗の定点観測の経験が活かせました。

そして、総仕上げは、ZARAの本社があるスペインの北西部、ガリシア州にあるア・コルニャの現地取材です。

どんなに専門家としての知識があっても、現地に足を運び、実際にお話しを伺い、現場をこの目で見なければZARAは語れないと思い、本社取材のアポを取ることにしました。

外資系に務めていた経験から、本社取材はジャパン社経由ではなく、本社ダイレクトアポの方が早いと思い、また、海外企業の取材は初めてだったため、かつて当地を取材した経験のある方のアドバイスも頂き、まずは取材の主旨を伝えるメールをインディテックス社に入れました。
当然と言えば当然ですが、世界トップ企業は忙しいのでしょう。メールに返事はありません。もう一度メールを入れ、続いて、時差に配慮して、本社広報部に電話をかけました。

当初は取り合っていただけませんでしたが、ある時、対応を頂いた女性スタッフの名前とメールアドレスを聞き出すことが出来たので、次はその方あてにメールをし、電話をかけて説明したところ、ようやく、こちらの目的を理解してもらうことができました。

しかしながら、アポを取り始めたのは7月後半、お察しの通り、ヨーロッパはバカンスシーズン、取材対応ができる広報の責任者の方は7-8月に長期休暇を取ってしばらく出社しないので、彼が出社するまで、何とも言えない、との返事でした。

締め切りは刻々と迫るのに、待っているわけにいかない僕は、同社の2001年以降のアニュアルレポートを読み続け、3日に1回くらい、その女性あてに電話をかけ続け、僕の名前を憶えてもらい、毎回、一言二言会話をすることを続け、彼女の方から "Taka, how are you?"と言ってもらえるようになりました。

その間のエピソードを申し上げると、僕はランチ時間の前の現地午前11時過ぎくらいが相手と会話がしやすい時間だと思って電話をかけ続けていたのですが…いつも相手が落ち着かない感じでした。不安に思った僕は、当地で働いたことのある方にアドバイスを求めたところ、笑いながら、当地のランチは2時スタート、11時はその前のティータイムであることを教えてもらいました。
おお、やってしまいました。僕は相手のことを考えて電話をかけたつもりが…大事な、くつろぎのティータイムをお邪魔していたことがわかったのです(反省)。
その後、ティータイムの後、ランチ前に電話をかけることで、その女性も落ち着いて話をしてくれるようになりました。ビジネスには、お相手の文化や事情を知ることが大事だと痛感しました。

ようやく広報責任者の方が出社された後、電話をかけ続けるも、責任者は忙しい、との彼女からの返事。原稿の締め切りもあと10日というころ、期限を伝えても、それはこちらの都合、先方は近々予定している決算発表の準備で忙しくて、責任者は対応できないとの結論を伝えられました。

思い切って、「お会いする約束はできなくても、来週飛行機を取って、そちらに伺います。僕は近くのホテルで待機しているので、もし時間があったら1時間でも30分でも時間をください」とお伝えして、
電話を切り、その後、実際、予約したフライト明細を彼女にメールをしました。ちょっと無茶でしたが、本社取材が出来なくても、無駄足にはしない、最悪、現地で何か情報がつかめるだけでも収穫はあるはずという思いでした。

あとは神頼み。

翌日、当地滞在予定6日間の最終日の前日、金曜日の午前中に1時間だけ、広報本部長のお時間が頂ける、という広報部からのオフィシャルメールがありました。
飛び上がる思いで喜びました♪ 本当にしつこいとは思いながら、彼女への電話を続けて、思いが伝わったのかと思います。本当にどうもありがとう。

いざ、スペイン、ア・コルーニャへ

日本からフランクフルト、マドリッド経由でア・コルーニャへ。ア・コルーニャの空港は、当時よく仕事で行っていたとかち帯広空港くらいの規模、案の定、スーツケースはどこかで乗り継げなかったようで、一緒に届きませんでした。

スーツケース遅延は何度も経験してますし、アポは4日後ですので・・・ここはスペイン、まずは空港で落ち着いて遅いランチと致しましょう(笑)

空港からタクシーでア・コルニャのホテルへ。まずはZARAが生まれ、創業者のアマンシオ・オルテガさんが愛して暮らす、この街を歩き、自分自身もこの街を好きになることから始めることにしました。

オルテガさんが仕事のキャリアをスタートした店

こちらは事前に調査をしておいた、ZARAの創業者であるアマンシオ・オルテガさんが75年前、ご家庭の家計のために、中学を中退して、14歳の時に働き始めたシャツ屋さん「GALA」です。オルテガさんは、ここで小売業の接客とファッションビジネスを初めて学んだそうです。

2014年当時はまだ、同じ場所で、オルテガさんを雇ったGALAの創業オーナーの年老いた息子さんたちが経営していました。(今は移転されたと聞いています。)
入店してキョロキョロしていると「どんなシャツが欲しいのか?」と聞かれ、奥からシャツを出して来て、「いまなら安くするぞ」と言われました。更に、「お前はZARAのオルテガを知っているか?」、「彼は以前、ここで働いていたんだ」と言われたのも覚えています。片言ながら、学生時代に選択外国語でスペイン語を勉強して、その後、メキシコやグアテマラやコスタリカを旅していたことがわずかながら役に立ち、何となく対話が成り立ったのが嬉しかったものでした。

ZARAの1号店はそこにあり

こちらは1975年、オルテガさんがZARAの1号店を開業した場所です。ア・コルニャの中心から少しはずれていますが、小さな店舗ながら、角地で目立つ好立地です。やはり、1号店から好立地出店主義だったんですね、と納得。2層の小さな店舗で、当時もZARA WOMANのコレクションに絞った品ぞろえでした。
創業の場所で40年近く経った今でも営業しているって、素敵なことだと思いました。

お膝元の各ブランドの店舗

アコルーニャ中心部には生鮮市場があり、その周りに商業施設が取り囲んでいます。

ZARAからUTERQUEまでそれぞれが小型の路面店ですが、インディテックスの全ブランドの店舗を見ることができます。(現在では、このあたりに複数あったZARAの小型店も新型大型店に集約していると聞きます)

オルテガさんの住まいから見えるヨットハーバー

ア・コルーニャの主要部は半日あれば歩けるくらいのこじんまりとした港町。特にハーバーが綺麗です。
実は、オルテガさんのご自宅もこのハーバーに面している大きなお屋敷で、お屋敷の写真を掲載するのは失礼なので、その前から見えるハーバーの写真をお見せします。この投稿のトップの画像もオルテガさんのお宅の前から写した画像です(自転車に乗っているのはもちろん、オルテガさんではありません、念のため(笑))。

オルテガさんは働き者ですが、休みの日はご家族とヨットに乗って洋上で過ごすのがお好きだとか。

しっかり働き、しっかり自然の中でくつろぐ、ヨーロッパ1の資産家さんのライフスタイルに憧れます。

スペイン料理で好きなのは何と言っても・・・

日本でインタビューに応じていただいた、以前、インディテックス社で働いていた方のおススメのスペインバルに入りました。

生ハムも、シーフードも美味しいですが、やはり、2012年のバルセロナで食べてから大好きなのは

ピメント・デ・パドロン! ししとうの岩塩炒めです。これがビール、スペインワインに抜群に合いますね♪ Muy bien! お代わり!

次回はインディテックス社に訪問します。

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