見出し画像

【依存症が出てくる映画の話#4】「ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ」差別社会と戦った女性の末路とは?

つか:りこさん、今日は?
りこ:今日はここらであの作品を取り上げなきゃいけないと思って本も持って来ました。いよいよ、あれでございます
 
つか:タイトルは?

りこ:2021年に公開されたザ・ユナイテッド・ステイツvsビリー・ホリデイっていう映画があって、それの原作がこの「麻薬と人間」という本なんです
 
つか:両方、依存症界隈では話題になった

りこ:話題になったね。特に本が出た時は衝撃的でした

つか:映画の感想はどうですか?
 
りこ:悔しい。
あれだけの才能があって、いろんな人達を勇気づけ、1930年代に黒人として白人社会で生きていくって、色々辛いことがあるわけじゃない
そんな中でやっぱり黒人の人たちが希望を抱いた彼女が、あんなふうに追い詰められて死んでいくというのは、もう本当に悔しかった
 
つか:利用されるとか翻弄されるとか、っていうのがいっぱい詰まっていて
りこさんが言う「悔しい」っていうのは本当にこの言葉通りだなっていうのは私も映画を見て同じ感想です
 
りこ:この映画は、この「麻薬と人間」という書籍が原作なんだけど、この本の中に、いかに薬物政策というのがその時々の為政者によって利用されてきたかっていうことを全部暴露した本なんだよね
 
つか:アメリカの国の話ではあるんだけれども、薬物が政治によって利用されるとかって、薬物に遠い人にとってみれば、あんまりぴんとこない話かもしれないんだけれども、でも実は歴史を紐解いていくと「あっこんな風に使われていたのか」とか、それって背景には末端の薬物使用者が涙を飲んでるわけじゃないですか。いろいろ考えることが多い、私は
 
りこ:アメリカの話っぽく書いてあるんだけど、日本も全く同じ状況だなっていうふうに思っていて、日本も大きかったのは民主党政権で「麻取っていらないんじゃね?」っていうんで仕分けられそうになったと
あの時に「もう警察1本でいいじゃん」ってなったことから、やっぱり麻取はこれはヤバイっていう風になっていって自分たちの存在感を示すためには、どうしたらいいのかっていうことで薬物依存症者というのは大変な事件を起こす、もう殺人犯の予備軍だみたいな感じに、どんどんなっていっちゃったのかな
よく知らない人達っていうのは、そうなんだって、どんどん洗脳に染まっていっちゃったのかな
それが今の日本の現状じゃないかなみたいな気が私はしています
 
つか:知らないからこそ乗せられやすいという意味では、日本もアメリカも同じ
麻取に捕まった私からすると、いろいろ思うところはあるんですけど
でも、この本には映画でも描ききれなかった詳細、それこそ売人の物語であったりとか薬物に対する歴史とか背景とか、そういったものが本当に非常に細かく書かれているっていう本ではあります
 
りこ:なんで日本の麻取に当たる人たちは、米国の麻薬連邦局っていうところなんだけど、そこを強化しようとしたかっていうと実はその前に大失敗しているわけ

つか:失敗があるんですね

りこ:そうなのよ
その大失敗は何だったかって言ったら禁酒法
 
つか:アメリカでお酒を飲んだり提供するということを禁止された禁酒法ですね

りこ:ハリー・アイスリンガーっていう人が、その禁酒法の種類を取り締まる担当者だったわけ
その戦いを14年にもわたってやって結局敗北するわけじゃない
むしろ、そうやって禁止したことによってマフィアは蔓延るわ、不正は蔓延るわ、取り締まる側の人たちがみんな買収されたりとか、社会の治安はどんどん悪化したわけじゃない
あの禁酒法でアル・カポネも大儲けしたんだもんね
 
つか:その失敗を学んでほしいという気はしたんだけど

りこ:そうなのよ

つか:ことは、そうはいかなかったんですよね

りこ:それで今度は麻取みたいな担当者になったことで、もっとしっかり締め付けようというふうになっていくわけよ
当時の背景としては禁止薬物で、それをやったら刑事罰が与えられてるっていう法律になっていないわけ
そうではなくて、やっぱり薬物にはまってしまって依存から抜けられなくなった人たちは治療が必要な人たちだよねっていうことが共通の見解としてあったったわけよ
 
つか:今より先進的な気がするんですけど

りこ:そうなのよ。最高裁もそういう判決みたいなものを出して、これからはそういう人たちは治療につなげていこうという風になっていったわけ
 
つか:日本でも、それこそ法律を学んでいる人たちが、そういうふうに向けてほしいっていう我々の願いがあるわけじゃないですか
それが変わっていったわけですよね
 
りこ:だって日本だって昔は合法だったわけじゃない
あんまり知られてないけど覚醒剤を発明したのは日本人の博士だからね
長井長義先生というね
 
つか:日本ではそれこそ昔ヒロポンという、戦時中にも広く使われていて、戦後も流通していたものですから昭和の芸人さんたちとか、結構昔の話をするときにヒロポンの話とかが出てくること多いですよね
 
りこ:そんな感じで、今みたいにすごく麻薬を使った人間は、もう人間失格で、ほんと二度と再起できないようにすべきだとか、刑務所に一生閉じ込めておくみたいな、そんな感じでは全然なかったわけよ
だけど、アイスリンガーはそれをやろうとするわけよ
そこで様々な科学的根拠のないデマを流布させていくわけよ
 
つか:これ、でも自分の保身というか、自分たちの立場を守るために、そういうことを仕掛けるわけでしょ?

りこ:すごい恐ろしいよね

つか:恐ろしいですよね

りこ:一番最初に狙いをつけたのは、大麻を使って一番それの薬理効果が出るのは黒人だと言い出すわけ
そんなわけないじゃない
 
つか:人種の攻撃になっていくわけですね

りこ:特にその頃のアメリカ社会というのはまだ人種差別が歴然としてあった時代だったから、白人社会の中では黒人が恐れられているようなところがあったわけよ
大麻を使うと黒人っていうのは欲望が爆発して、白人女性をみんな襲うと
デタラメな報告書よね
そういうのを使って上院議員とかに報告したりするわけ
 
つか:これ、怖いね、ほんとにね

りこ:だから議員さんたちも日本薬物政策を決めるときに逮捕権って、ものすごい大きな力なわけじゃない
それを持っている人たちからの一方的な資料だけを見て、議員さんたちは「これは大変だ」と言ってるわけよ
我々の声も聞いてくれって私は非常にいいたいんだけどね
 
つか:いわゆる専門家の意見だからっていうので、わかんないから鵜呑みにするじゃないですか

りこ:自分たちの都合のいい専門家の話だけを流すわけよ

つか:それを考えるのが役人の仕事だし、政治家の仕事だしっていう気はするんだけれども、当時はそういうことにはならなかったんですよね
 
りこ:ならない。その科学的根拠なんか無視して、そういうデマを流したとき、ちょうどいい標的になったのがビリー・ホリデイなのよ
もう、ロックオンするわけ、このアイスリンガーが
 
つか:映画では執拗に追い詰める感じとかが

りこ:追い詰めていくのよ

つか:やらしいというなんかね

りこ:ビリー・ホリデイは反骨精神がある女性なわけよ
やっぱりビリー・ホリデイの代表曲と言ったら、ストレンジ・フルーツという

つか:有名な曲で白人によるリンチの話を歌った歌で、歌詞を聞くと辛いというか悲惨な感じの
 
りこ:本当に悲しい曲だよね
だけど、そんな歌を歌われることは白人社会としては非常に迷惑なことじゃない

つか:要はリンチをする側を非難している歌ですからね

りこ:だから、それを歌わせたくないとなって、大きいクラブ、ライブハウスみたいなところとかは、それを歌うか、歌わないかっていうことが大問題になっていくわけよ
ビリー・ホリデイがそれを歌わないんだったら、このライブハウスで歌わせてやるよとかいうんだけど、やっぱり自分のソウルだよね
自分もこれを伝えたいんだっていうものがあるから、その約束を破って歌っちゃったりするわけよね
そういう反骨精神というのは、もうぴったりだったわけよ
なので、ビリー・ホリデイがあんな風に言うことをきかないとか、いろんなことを反抗しているは薬のせいだみたいなふうにどんどん擦り付けていくというかね
 
つか:薬と結びつけていくわけですね

りこ:しかもビリーホリデイが窮地に立つように追い込んでいくわけよ
アイスリンガーが裏で手を回して
 
つか:それこそ肉親というか仲間を取り込んでいったりとか

りこ:歌える場面を少なくしていったり、レコーディングをさせないとか、そういうふうに追い込んでいくから、ますますビリー・ホリデイは、もう薬に頼るしかなくなっていくわけよ
そこから、自分は治療したいと、薬をやめたいと、回復したいということを願って、それを訴えたりもするんだけれども
 
つか:映画でもそのシーンが描かれていて、私は治療したいっていうことを言うんですよね

りこ:それも受け付けないと、逮捕して刑務所に入れるっていう事に燃えているわけよ
だけど、やっぱり薬物依存でもう本当にズブズブになっちゃった
ジュディー・ガーランドっているじゃない
 
つか:アメリカの歌手

りこ:オズの魔法使いのね
でも本当に彼女はちいちゃい頃の美少女ぶりで、もう白人のアイドルみたいな人なわけじゃない
模範的な国民みたいな風に見られてるわけだから、その人だけはアイスリンガーが助けようと手を回したりするのよ
 
つか:人種差別を含めての感情なんでしょうかね
りこ:だから結構そういう人種差別もすごくひどい人なんだよね

つか:もともと差別主義者みたいなものがあったのか

りこ:もともと、そういう人格じゃなかったら、ここまで薬物依存のことを貶めていくなんてできないよ
その人たちにだって人生があるわけだし、家族もいるわけだし、なんでこういうふうに薬を遣って体調も悪くなっていったり、日常生活ができなくなっていってしまう、その人たちを助けようと普通だったら思うけど
 
つか:それを標的にしよう、利用しようっていうわけですから

りこ:叩き潰してやろうって、なかなか考えないよ
普通の精神だったら
 
つか:結局、追い詰められたビリー・ホリデイは43歳で短い生涯を終えている
私、44歳で同じ歳なんですよ
44で歌手として成功したかもしれないけれど、やっぱり薬物によって翻弄されてしまった
しかも彼女は自由を望んでいたっていうのって最初の感想に戻りますよ
ほんとに悲しい、悔しい
 
りこ:映画のほうではアイスリンガーの裏にある野望というか目論みみたいなのが、あんまりわからなくなってるんだけど

つか:確かにね
なんでこの人は執拗にビリー・ホリデイのことを追っているんだろうみたいなのは、映画だけだと思ってしまう
 
りこ:ぜひ、この本と一緒に読んでいただけたらと思うのよ
この本には国連を脅していくとか、他の国っていうのも、なんでそんなに厳罰化していかなきゃいけないんだっていう反発とかがあるわけよ
他の国とかも厳罰化なんて昔はそんなにしてないから
だから、そのことに反対していくとかっていうと、そこらへんに対しても、みんな攻撃して、全部寝返らせたりするっていうところが書いてある
 
つか:それこそ本当によく考えると、日本でヒロポンが流通していて、それがやっぱり危ないよねっていうことで禁止されていくんだけれども、そこでスティグマを植えなくてもいいわけじゃないですか
そういう意味では忌み嫌われている時期っていうのは、そんなに長くないのかもしれない
 
りこ:だって80年代のテレビ番組は全然違うよ
だって尾崎豊さんが捕まったときとか、わずか半年で夜のヒットスタジオに出てるんだもん
 
つか:そういう意味でも民放連のCMとか役割で植えつけられたものって、簡単に人の感情というか変わってしまうものなんだな
 
りこ:だって本当に夜のヒットスタジオで司会者の方とかも、いろいろ事件があって、大変でしたけれども

つか:僕もそれ見たことあります

りこ:でも我々もみんな尾崎さんの才能をこのまま埋もらせるのではなく応援したいという気持ちですとかね
あと私が見てほしいのは昔の映像なんだけど、徹子の部屋に中島らもさんが出ているのよ
「あなたもいろいろ薬物やられたらしいけれども覚醒剤なんかもお使いになったことおありなんですって?」みたいなことも言っているわけよ
全然違ったの
それがどんどんこういうふうに締め付けられるようになっていったのね
なので、私はこの本と映画をセットで見てもらって、今の日本の薬物政策っていうのが本当にいいことなのかどうかっていうのを、いろんな人たちに考えてほしいなっていうふうに思っているし、法律で決まっているものはダメなんだよみたいな感じの人達が多いんだけど、法律を疑っていかないと、政治家にとって為政者にとって都合の良い法律なんかどんどん決まっていっちゃいますよ
法律は正しいとは限らないんですよ
疑う目を持った方がいいですよということをすごくお伝えしたいです
 
つか:政見放送みたいになっていましたけど
確かに法律が決まった背景とか1回決まると変えるのって、ものすごく大変だから、そういう意味では本当にそれっていいの?という持つ目っていうのは大事なんじゃないかな
 
りこ:大事よ
だって今までだって間違って法律いっぱいあったわけじゃない
ライ病の人たちに対する法律とかさ
何度も失敗してるんだから、その辺ちょっと疑いの目を持っていただくには、実に良い映画であり、実にいい本です
これ500ページあるけど、あっという間に読めちゃうよね
 
つか:もう興味ある人ない人に関わらず「こんなふうに思ったの?」「出来事だったの?」っていうのでパッと読めちゃうと思います
りこ:ぜひ、これは観て頂きたい、読んでいただきたいということで今日は取り上げてみました

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?