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【交換日記】命をつなぐ

まいまいへ
この間はありがとう。
久しぶりにゆっくり話せて、本当に嬉しかったよ。
まいまいが交換日記を書いてくれて、もう4ヶ月が経ったけど、相変わらずコロナは落ち着かないね。


コロナ禍のなか、3月に無事やりきった出産はとてつもなく神秘的な体験だったよ。

午前4時に破水して入院。
微弱陣痛が続く中、なかなか本格的にならなくて、陣痛室で1人、不安だった。
コロナの影響で、毎回の健診は付き添い禁止、立ち会い出産も禁止、入院中の面会も禁止。
私だけにすべてがかかっている気がして、怖くて、震えて、逃げ出したかった。
陣痛が強くなるのを待ちながら、
「ここに家族がいたらな」「そばで大丈夫って笑ってもらえたらどんなに楽だろう」「このまま陣痛がこなかったら、どうなるのかな」って涙がポロポロあふれたよ。

その日の夜から陣痛が強くなってきたものの、間隔はせまくならなくて。
ずっと、5分〜10分間隔の陣痛が続いた。


出産に挑むにあたって、私が心に決めていたことが2つあってね。
痛いって言わないことと、
赤ちゃんのことを考えること。

自分のことだけ考えると、絶対に辛くなるだろうし、
痛いって思うと、どんどん痛くなると思ったから。
赤ちゃんと一緒に出産を楽しもうって心に決めていたんだ。


1人で不安な中、そう決意していたことを思い出すと、痛みがくるたびに嬉しいと思えた。

赤ちゃん、頑張ってくれてるんだな
ひとりじゃないんだな
やっと会えるんだな
痛みがどんどんきてほしいな

陣痛の波に合わせながら、冷静に呼吸法を繰り返して赤ちゃんに酸素を送り続けた。

一緒にがんばろうね
こっちの世界はとっても楽しいよ
お腹から出てこようとしてくれてありがとうね
みんな待ってるよ

お腹をさすりながら、何度もつぶやいた。

「赤ちゃん、どんどん下に降りてきてるよ!」
「この程度の陣痛で子宮口がこんなに開くなんて信じられない」
看護師さん、助産師さんもびっくりするほど、強くない痛みの中どんどんお産が進んだ。

結局、陣痛促進剤を投与して。
本格的な分娩になってからもご飯をもりもり食べたり、助産師さんたちと笑っておしゃべりしたり、自分でも信じられないくらい出産を楽しんだよ。

破水してから本格的になるまで長かったものの、分娩時間は約3時間半というスピード出産。

赤ちゃんが産声をあげた瞬間は、温かくて幸せで、涙が自然とあふれてきた。 

人が産まれるって、ものすごいことなんだなって。

すぐに赤ちゃんを抱かせてくれて、腕の中で動く小さな小さな身体がこのうえなく愛おしく感じた。
一生かけて大事にする「たから」だと思ったよ。

出産後しばらくは、自分が人間を産んだことが信じられなくて。
同時に、この世界は思っていた以上に温かいのかもしれないと思った。
すべての人がお腹の中で育って、命がけの出産を経て、人の手で育てられているんだなと思うと、なんて美しい世界なんだろうって。
誰からも愛されない命なんてないと、今は思うよ。


私はあいかわらず引きこもりの生活をしているけど、まいまいはどんな日々を送っているかな?
またキャンプ場計画、ゆっくり聞かせてね!

さゆり

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