見出し画像

【親#04】命の尊さを知った優しい息子

小3の息子は、家の水槽で飼っているザリガニが大好きで、
息子が小1の時に自分で捕まえ、毎日餌をやり、水槽の掃除や水替えもすべて自分一人でやって、
朝と夕と、「おはよう、ザリ」「ただいま、ザリ」と声をかけていた。

外からのぞき込むと、他の家族では無視するか、たまに反応するくらいだったが、息子が近づくといつも大きくはさみをあげて、挨拶しているように見えた。餌をくれる人だとわかっていたのだろうか。

その息子が2年半大事に世話してきたザリガニが、今日死んでしまった。

学校から帰ってきて最初に気が付いた息子は、
「あー!ザリが死んでる」と叫んで、みんなで確認した後、
あまり聞いたことのない、絞り出すような押し殺すような声で泣き出し、
その後布団をかぶってずっと泣いていた。

多少環境が悪くても丈夫なザリガニで、かなり長く家族のメンバーになっていた。過去にもザリガニを飼ったことはあったが、息子にとって、自分で大事に育てて仲よくなった友達だった。

最近餌をあげてもあまり食べなくなってきており、おじいちゃんになってきたのかねと言っていた。
ついおととい、元気をだしてもらおうと、慣れた手つきで、水槽の砂利を洗い流し、水を入れ替えたばかりだった。
病気っぽいところもなく、寿命だったのだと思う。

妻は、息子に、毎日大切にしてくれて、最後もきれいな水に変えてくれて、
ありがとうって思いながら死んでいったと思うよ、と言った。
本当にそう思う。小学校低学年で、ここまで親の手を借りず丁寧に世話をするのは、なかなかできることではない。
愛情をたっぷり注いで育てていた。

大切なものの命を亡くす気持ちを、息子は今日知ったことだろう。
そこまでの関係性を築いてきた、息子とザリガニに敬意を表したい。

しばらく泣いた後、庭に埋めて、お墓を立ててあげた。
石を選んだり、墓標を書いたりしてるうちに、
息子も少し落ち着いてきた。

これからは、毎日お墓に向かって呼びかけるだろう。
彼はとてもやさしい子に育った。
息子にとって、ザリガニとの月日がとても良い経験であったと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?