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3 『国債残高/GDP比率』:日本と他国の財政健全性評価基準の違いとその影響

多くの国では、財政政策の健全性を測るために
「国債残高/GDP」比率という指標を使用しています。

これは国の借金の総額をその国の経済全体のサイズ、
つまり国内総生産(GDP)と比較することで、
財政の持続可能性を評価する方法です。

GDPは一定期間内に国内で生み出された
財やサービスの総価値を示し、
実質的には国民の総収入に等しいとも考えられます。

先進国を含む多くの国々は、
この比率の「安定化」を最優先の財政目標としています。

しかし、矢野康治事務次官の論文では、
財政出動を増やすことで「国債残高/GDP」比率が
悪化すると主張しています。

彼は、この比率を安定させるためには、
政府支出を抑制し、プライマリー・バランス(PB)の赤字をなくして
黒字化を目指す必要があると論じています。

しかし、この主張にはいくつかの問題点があります。

特に、矢野事務次官の分析は、
消費増税や予算カットが経済成長を抑制し、
結果として税収を減少させ、
さらにPB赤字を悪化させる可能性を無視しています。

先進国の中で、
PBを財政健全性の主要な指標としているのは日本だけです。

国際的には、「国債残高/GDP」比率の安定化を
目標とすることが一般的であり、
この比率を適切な範囲に保つことが、
経済成長と財政健全性の両立において重要視されています。

金利が成長率よりも低い場合、
PBが赤字であっても「国債残高/GDP」比率は
改善する可能性があります。

この点で、矢野事務次官の分析は、
消費増税や支出削減が短期的には「国債残高/GDP」比率を
小さく見せるかもしれませんが、
長期的には経済成長を阻害し、
財政健全性をさらに損なうことになりかねないという
実証的な証拠を無視していると言えます。

経済成長を促進し、財政の健全性を高めるためには、
積極的な財政政策と投資が不可欠であり、
一方的な財政緊縮政策は逆効果であることが多いのです。

以上の分析を踏まえると、
財政政策に関する議論では、単にPBの赤字削減を目指すのではなく、
経済成長を促進し、持続可能な「国債残高/GDP」比率の安定化を
図ることが重要であると言えるでしょう。

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