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利回りの高い通貨建て債券はどうなのか?

世界的に低金利が続いています。

2022年より
FRBが利上げを行うとはいえ、
日本のメガバンクの
普通預金金利は0.001%であり、
個人向け国債の利率は0.05%となっています。

このような低金利環境だと、
高金利通貨建て債券が
魅力に感じる人もいると思います。

高金利通貨建て債券であれば、
1桁後半の利回りは当たり前で、
足元では、
利回り23%を超えるものも
出てきています。

利回り23%なんて負けることはないだろう。
絶好の投資チャンスではないか?
と言っている友人もいました。

ただ、
このような高金利通貨建て債券は、
本当に投資価値が高いのか、
この記事では、
高金利通貨の過去の為替レートも参考にしつつ、
高金利通貨投資の注意点を確認したいと思います。

高金利通貨建て債券は投資価値が高い?

SBI証券の外国債券ページをみると、
メガバンクの普通預金金利や
個人向け国債の利率とは
かけ離れた利回りが並んでいます。

「利回り23%を超えるもの」とは、
トルコリラ建て債券を指しています。

債券は
発行体の信用リスクを負うので、
実際はそれぞれの
信用リスクを精査する必要があるため、
日本円での運用に比べて、
高利回りであることは確かな事実です。

商品名
バークレイズ銀行 南アフリカランド建債券
利回り:年8.848%
残存期間:約10.8年

欧州復興開発銀行 トルコリラ建債券
利回り:年23.009%
残存期間:約2.4年

ラボバンク メキシコペソ建債券
利回り:年8.030%
残存期間:約11.2年

国際金融公社 ロシアルーブル建債券
利回り:年7.392%
残存期間:約1.5年

しかし、だからといって
高金利通貨建て債券は投資価値が高い
と言い切ることはできません。

投資の利益は
インカムゲインとキャピタルゲインの
トータルで決まります。

利回りはインカムゲインの視点にしか
立っていない指標であるため、
いくら高いインカムゲイン(利息収入)を得ても、
それを上回るキャピタルロス(為替差損)であっては
トータルリターンはマイナスとなり、
投資としては失敗となります。

14年かけて12分の1になったトルコリラ/日本円

典型的なのが、
通貨安が止まらないトルコリラで、
トルコリラ・日本円の為替レートは、
足元で8円30銭くらいだが、
2020年4月は約16円でした。

つまり、2年も経たずに、
通貨の価値が半分になってしまったわけです。

どんな高い利息を受け取っていても、
2年も経たずに為替差損で
投資元本が半分になってしまっては、
トータルリターンをプラスにもってくるのは
難しいことが予想されます。

実は、
トルコリラの下落は今に始まった話ではなく、
トルコリラ・日本円の長期チャートを確認すると、
リーマン・ショック前の
2007年10月には約100円をつけていました。

足元は約8円なので、
14年かけて12分の1に
なってしまったことになります。

12分の1ってすごいですよね。

この間に投資した人がいれば、
14年分の利息を受け取っていても、
トータルリターンでは
目を逸らしたくなるような
大幅な損失が発生しているはずです。

トルコリラの背景として、
本来独立性が担保されるべき
トルコ中央銀行の政策決定に、
絶大な権力を持つエルドアン大統領が関与していること、
そして、エルドアン大統領が利上げに否定的である

であることは事実です。

ただ、
トルコリラほどではなくても、
他の高金利通貨も
大きなキャピタルロスが発生しています。

たとえば、
ブラジルレアル・日本円は
リーマン・ショック前の高値が約70円→現在が20円20銭
で3分の1以下、
南アフリカランド・日本円は
リーマン・ショック前の高値が約18円→現在が7円10銭
で2分の1以下、
メキシコペソ・日本円は
リーマン・ショック前の高値が約11円→現在が5円40銭で
2分の1以下になっています。

リーマン・ショックから
13年以上が経っているので、
ずっとインカムゲインを積み上げ続けていれば、
トータルリターンがプラスに浮上している
投資案件もあるかもしれません。

ただ、
同期間のS&P500が3倍以上に
なっていることを考えると、
新興国リスクを負ったことに
見合うリターンであったかどうかは、
大いに疑問が残ります。

高金利通貨は為替が弱くなりやすい

注意したいこととして、
そもそも高金利通貨は為替が弱くなりやすい
という特徴があることです。

その背景にあるのは
購買力平価説という考え方で、
為替相場は2つの国の通貨の購買力が
同じになるように決まる
と考えられています。

そのため、
例えば、全く同じパソコンが、
・米国で1,000ドル
・日本で10万円
で売られているとします。

購買力平価説では、
同じパソコンが買えるので1,000ドル=10万円なので、
1ドル=100円と考えます。

ここで、
米国で急激なインフレが起き、
日本は物価が変わらなかったと仮定すると、
まったく同じパソコンが、
・米国では2,000ドル
・日本では10万円
で売られているとすると、
2,000ドル=10万円となり
1ドル=50円
という為替レートが導き出される。

購買力平価説に立てば、
インフレが起きている国ほど
為替は弱くなりやすく、
高金利通貨の国(新興国)は
インフレ率が高いことが多いため、
高金利通貨は為替が弱くなりやすい
ということになります。

実際は、
モノの移動に輸送コストがかかったり、
各国で関税をかけたりするので、
購買力平価説が
いつでも通用するわけではありません。

ただ、
中長期的には、
購買力に基づいた水準に
関連しやすいと
考えられています。

トータルリターンを意識した投資を!

そもそも高金利通貨は為替が弱くなりやすい
という前提であれば、
高金利通貨建て債券に
長期投資する際は、
おそらく発生するキャピタルロスを
インカムゲインでカバーしきれるか

を考えることが非常に重要になります。

投資タイミングによっては
キャピタルゲインを
期待できないわけではないが、
為替差益を前提にした
投資戦略はリスクが大きいと考えられます。

トルコリラに関しては、
通貨安が止まらないため、
トルコ10年債利回りは21%を上回りました。

10年債利回りとしては
異常な数字であり、
それくらいの金利を提示しないと、
投資家がトルコ国債を
買ってくれないことを意味しています。

トルコリラ建て債券の
参考利回りは23%を超えてきているが、
これが投資に値する数字かどうかは、
極めて慎重な判断が必要になります。

この記事は、
高金利通貨を
一概に否定しませんが、
高いインカムゲインだけを見て
投資判断をすることには、
注意が必要であると考えています。

為替変動によるキャピタルロス(ゲイン)も
しっかり考え、
トータルリターンを意識した
投資を行うことが求められます。

一緒に学んでいきましょう!

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