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書くということ。


振り返ることでしか書くことができないことがある。今現在の中で決して書くことができないことがある。
言葉の外にある出来事が刻々と変化し自分に影響を与え続けている時間には、書けない言葉たちがある。だけど、振り返ったときにもう忘れてしまっている言葉もある。外側からの刺激で出さざるを得なくなったような言葉は、その瞬間を逃してしまうと途端に忘れられていく。振り返っても、言葉の足跡はどこにも見つかることはない。

その人にとって不要になる言葉というものがあるだろうか。ある時期を過ぎればもはや意味を為さなくなる言葉というものが、あるだろうか。
今私が書くことのできる言葉は限られている。何か言葉によって記述しようとする瞬間に、それまで足場だと思っていた場所が急に崩れ、現実の方が危うくなって崖から落ちてしまいそうな気がするのだ。
その境界線に爪先立ちで言葉を放ってみせるのは、暗闇への跳躍に他ならない。

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