ドイツへ!

行くことにした。
友達に会うためだ。

行くだけでたいへんだった。

寝不足だからだ。

昔から遠足の前日には寝れなかった質なのだ……


出発だ出発だ!

勿論、行程の間、寝れそうなところでは頑張って寝ようとしたのだ。空港までの京成特急、香港までの四時間、フランクフルトまでの13時間……。だけど、電車の中ではガラガラが転がっていかないように常に押さえておく必要があったし、香港までの空の旅は、放っといてくれたらいいのにキャセイパシフィックのCAさん達が次から次へと機内食を運んでくる上になんか面白い映画を見てしまった(俺のせい)。それではフランクフルトまでの便ではどうだったか。
チケットを発見した時は「A席! うおお窓際や」と喜んだ(子供の頃から飛行機大好きなのでそれだけでうれしい)俺。だけどそんなに簡単な話ではなかった。 

香港空港はデカく、トランジットし甲斐があった。トランジット大好きマンなので嬉しい。閑散期なのでそこまで賑やかではなかったけど、トランジットの国際空港ってわりといつもそんな感じかもしれない。

謎のキャラ
ハイテク飲み水。意外とこういう設備がしっかりしている所は珍しいと思う。おいしかった


香港空港33番搭乗口にできた長蛇の列に「すげ∼人数やな」と思いながら乗り込むと、エコノミークラスは座席が3-3-3列のワイドボディ機。エアバスA350という、最新のめちゃめちゃ人数が乗る機種じゃないか。横3列の端っこということは、隣にもう二人座るということであり、用を足したいときには二人の赤の他人に”sorry~~"とお願いして一旦通路に出てもらうという微妙に申し訳ない時間を余儀なくされるということだ。暗澹とした気持ちに。

俺の隣に乗り込んできた(というのは嘘。正確にはもう座っておられて、搭乗の時点で一回目の”sorry~~"を発動してしまった)のはドイツ人のカップル。なんか良い人そうだが男の人がデカい! かなりガタイが良い。これは動いてもらうのが大変だ……。

機材トラブルでなかなか離陸しないので窓からパシャリ。
夜の空港は無条件でアガりますね

もう着くまでずっと寝てしまえばええねん、と腹を決めて毛布を引っ被ったは良いものの、離陸は遅れるわ、離陸した瞬間機内食が運ばれるわでなかなか寝れない。

いや、CAさんのスケジューリングを責めるつもりは全くない。おそらく、飛行時間的に最低二回は飯を出さねばならない決まりがあるのだろう。その上睡眠時間は8時間確保するとしたら、意外と時間の余裕はない。しかも、離陸時にすでに出発地の香港時刻ではてっぺんを回っている。もう、飛び立つや否や乗客の腹に飯を流し込んで間髪を入れず寝かしつけるしか方法はないのだ。

そんなわけで、CAさんが「おら食え~、食ったら寝ろ~」とばかりに飯を運んでくる。うまうま。隣のデカイカップルは本当に優しく、トレーを渡してくれたし、CAさんに回収してもらうときも多分手伝ってくれた(多分、というのはその時あまりの眠気に俺が気絶していて気づいたら片づけられていたから)。俺だけじゃなく、彼女さんの方(仮にアリスとする)も即座に寝落ちしていたので、すでに広州上空辺りで、真ん中のデカイ彼氏さん(ボブとする)は両脇に爆睡している奴二人を挟んでいる格好になっていたようだ。

ボブ、マジでありがとう。いや俺は君の彼女でもなんでもないのに色々迷惑をかけたかもしれずすまん。乗るや否や備え付けテレビで変なゲームを始めたので「ガキかこいつ……」とか思ってて申し訳なかった。

そんなこんなで飯を食い終わった瞬間に眠りに落ちたのだが、いかんせん眠りが持続しない。すぐ起きてしまうのだ。多分一時間か二時間おきくらいに目を覚ましていたと思う。長距離移動必須アイテムの枕を装備してはいたものの、エアバスのシートとは微妙に合わず、夜行バスで発揮するほどの力を出しはしなかったようだ。眠れないというより寝付けない。起きるというか、意識を取り戻すという感じ。出発前にJAXAのH-3が無惨な最期を遂げたニュースが海馬に残っているせいか、妙に不吉な夢を見るや、暗闇の機内で眼を覚ます。相変わらず眠気は壮絶なので、数分でまた眠りに落ちる。でもまた意識回復、そしてまた気絶……の繰り返し。その度毎に隣では謎のゲームに興じているボブ。暗闇の中で、煙草禁止のサインとボブの画面だけが光っている。ボブ、寝ろよマジで。

そんなこんなで、トルコ辺りで客室のライトが点灯し、「朝」になった。黒海の上で、地図の右手に「ヘルソン」「ザボリージャ」などといった地名を観ながら、ちょっと複雑な気持ちで「おら~起きろ~」とばかりに配られた朝飯を食らうと、もうあとは2時間少々との表示。ちょっと意外。まだバルカン半島にも到達していないぞ。もうドイツまで伊丹から那覇くらいの距離しかないのか。「ヨーロッパ」ってそんなに大きくないんだなあ、と改めて実感。それくらいの規模感の空間で膨大な歴史と文明の興亡が起こってきたのだ。

トレーを片してもらった後、まあ流石にトイレ行っておくか、と思った。切迫した尿意はないけれども、これはおそらく膀胱が麻痺しているからで、あと二時間絶対に堪えられるという保証はない。しかも着陸してから絶対色々あって時間はかかるだろうし。意を決して「え、excuse me~」と隣に声を掛けようとすると……

そこにはアイマスク&耳栓を着け、毛布を肩までかけて完全スヤスヤ体勢のボブの姿があった。

ボブ~~!!! あれほど寝とけっつっただろ!! オイ!!(言ってない)

一瞬迷ったが、ボブも隣の東洋人がいきなり膀胱を破裂させて「いや、君が寝ていたから起こしたら悪いと思って」とか言い訳したら困惑するだろうな、と思ったので、肩を叩いて声をかける。 I have to go to toilet. アリスの方がいちはやく気づいて快く席を立ってくれた。二人とも本当に感謝。

その後、チェコ上空辺りで朝焼け。美しい……感動してパシャパシャやっていると、ボブがなんかそわそわしながら「撮っていいかい」と聞いてきたので二人そろってパシャパシャ(いろいろな言動から察するにボブは工学部系のメカ好き男子のようだった)。我関せず映画を見ているアリス。


凄く綺麗。キャセイパシフィックのウィングレットデザインがカッコいい。

程なくして、着。前述の通りろくに寝れてないので眠気はあるが、現地は朝の7時! 行くぞ~~!!


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