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KRUG物語

まいったな KRUG かよ・・・

フランス・プロバンス地方にあるHôtel Auberge la Fenière  ラ・フニエール。オーベルジュというのはちょっと高級なレストランが入っている小型のラグジュアリーホテルのようなものと捉えている。ここは静かな街ルールマランの郊外にあってそこだけ離れている(住所は Cadnet)。レストランは昔からミシュラン一つ星だ。宿舎とレストランが一緒にあるということは、食事後に移動の事を考えなくてよくて、自分の部屋に直行出来るのが嬉しい。ここは違うが、レストランがメインでおまけで宿舎がついているという所もある。


初めてここへ行ったのは大昔の1999年でそれから何回か行っている。今は知らないが当時は広い庭があって、リンゴや色々な果物の木に実がなっていて、オリーブやプールもあって。白い屋根付きのソファーが屋外に点々と並んでいた。レストランは女性シェフ、オーガニックを上手く使うプロバンス料理で有名だ。優しいシェフと優雅な環境のあり方が料理の味にもそのように出てくる。


フランスの夏は夕方でもまだ明るい。この時期は温度も湿度も丁度よく適度な風があって大変心地よい。日本では16:30位の夕方のイメージで19:30だったりする。
食事の前はソファーでお待ち下さいと言われて、屋根が付いているフカフカのソファーに座って待つことになる。メニューを持ってきながら、アペリティフ(食前酒)はいかがですか? と給仕の彼が丁寧に聞きに来る。

この時は、豪華な気分であったのでグラスでシャンパンを頼むことにする。色々と飲み物はあるのだがシャンパーニュは BRUT(辛口白)とROSE(ロゼ)と、もうひとつあって3種類から選ぶことになる。ロゼと最後のは値段が高かったので、一番安い BRUT(ブルット)を頼んだのだけど、BRUT ?  BRUT・・ですね と確認したので oui (ぅい =はい)と答えたら、最高の笑みで去って行った。この時はここ2回目で2004年の出来事。

綺麗なフルートグラスに丁寧にボトルを持ってきて BRUTで御座います とキンキンに冷えたのを注いでくれた。過去に何度もシャンパーニュは飲んだことあるけれど、こんなに美味しいのは今まで飲んだことがない。こんなにシャンパーニュというのは美味しいんだ!! ・・と発見した2004年の夏。

最高の雰囲気の中で心地よい食前酒を楽しむ。自分が一つレベルが上がったのを感じたものだ。実際には上がっていたのがわかったのは少ししてからだった。

そう、後で写真を見たら知らないラベルのブルットだと思っていたのは KRUG(クリュッグ)だったのだ。私のフランス語の発音が悪いのと耳が BRUT も KRUG も同じに聞こえるので、彼には十分伝わらなかったということ。会計の時に恐る恐る見た値段はグラスで多分27ユーロ(≒4000円)と20年前程前の当時としてはかなり高いものであったが、あの価値があれば割高ではなかったと当時でも納得。今だったら超格安であると言える。その時は、一つ自分のレベルが上がった思いがしたものだ。これがKRUG初体験の物語。

それから調べて、クリュギスト(Krugist → KRUG超愛好家)なる言葉もあったりして、KRUGは世界的に有名で高級なシャンパーニュであるのを後から知った。値段もえらく高いので(日本ではネットの安い所で3万円弱、良い所なら4-5万円する)、そう簡単に飲めるものではないのも分かった。


あれから12年、なんとお友達お客様がこれのGrand Cuveeを冷やしてお土産に持ってきてくれた。箱だけでも高そうだし捨てるのがもったいない。逆だろうとも思うのだけど、それに匹敵する料理を出す予定なので(なんという傲慢な回答)ありがたく一緒に飲ませてもらう。おおお、あれから舌も少しは肥えたけれどあのキリリとした緊張感は健在。

          まいったな、KRUGかよ ・・・  がしっくりくる。

この方は高級シャンパーニュばっかり持ってきて頂けるので(しつこく書きますが同レベルに匹敵する料理を出します・傲慢です)、口が肥えてしまって困ってしまう。JALプレエコ機内で出てくるスクリューキャップのシャンパーニュやラウンジのでは物足りなくなる・・・ビジネスクラス級ならまぁ合格かなレベル。表紙の桃色のはうちで飲んだ更に高価で美味な Rosé ね、綺麗なピンクではなくてこんな褐色なんだ。(ネットで4 - 5万円!)

そんな方とももう一緒に飲めなくなってしまった。今回の文章は Y.O に捧げる。これは読んで欲しかったな・・・

更に、昔の写真を整理していたらランス(シャンパーニュのシャンパン中心地)のレストランでの食事が出てきた。ばかに美味しそうだなと思って名前を調べていたら、Assiette Champenoise だった。
ここは当時ミシュラン2つ星で今ではランス唯一の3つ星になっている。今となっては敷居が高すぎるのだけど、当時はギリギリ行けたのだな・・・(謙遜)
調べてみると、ここのシェフArnaud Lallement は、KRUGのゲストハウスの料理も兼任しているのだと・・・一流には一流がいるものだと思った。



先ほど亡くなった世界的音楽家 坂本龍一 氏はKRUGのファンだそうで、3種の2008年 KRUGにインスピレーションを得て組曲を作った。今年坂本氏を検索していて発見したもの。この中に37分の動画もある。ここに参加できる人はどんな人なのだろう・・・ 演奏の合間にシャンパーニュがサーブされている!
2021年頃完成と思われるので晩年の作品だ。こんな素晴らしい曲があるのを知らなかったのは不覚。


youtubeにて音だけでも聞ける  
  Suite for Krug in 2008  Sans Interludes(間奏無し) 28’17”


  Suite for Krug in 2008   Interludes(間奏付き) 33’04”


SPOTIFYだとここ


この透明感のある音は心に溶け込んで脳波を刺激しリラックスの体験
やっぱりここを追加することにする。NYのブルックリンミュージアムで演奏された映像は、素晴らしいの一言につきる・・・

 

  // とにかくKRUGはどこを切っても一流だ //
まいったな、KRUGかよ・・・





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