【徹底解説】キャリア構築理論とは何か?(4)プロティアン・キャリアやバウンダリーレス・キャリアとの相違:Savickas(2013)
今回は、サビカス先生のキャリア構築理論が、その師匠の一人であるドナルド・スーパーとどのように相違しているのか、ダグラス・ホールやマイケル・アーサーとどの点で共通しているのか、といった点を中心にマニアックに解説します。
ドナルド・スーパーとの相違
スーパーのキャリア発達理論は、典型的なキャリアを予期可能な発達段階として描いていたとサビカス先生は述べています。このようなスーパーの捉え方をサビカス先生は一部引き継ぎ、一部は更新しているようです。
まず引き継いでいるのは、人間の生涯発達をベースにしている点は、サビカス先生もスーパーからの影響と考えられます。人というものは生涯を通じて変化するものであり、自らの働きかけという生涯を通じた学習に力点を置いていることは前回見た通りです。
他方、静的で予見できる将来の段階を進んでいくというスーパーの捉え方は引き継ぎませんでした。そうではなく、サビカス先生はVUCAな社会や変化の激しい職務に対してどのように適応していくかという個人の多様なキャリアの適応に焦点を置いて、キャリア構築理論を提唱したと評価できます。
プロティアンとバウンダリーレスの登場
変化の激しい環境において予期できないキャリアを開発するという捉え方をしているのはサビカス先生だけではありませんでした。この論文の中では、マイケル・アーサーのバウンダリーレス・キャリアとダグラス・ホールのプロティアン・キャリアとを挙げています。
プロティアン・キャリアは日本企業でもキャリア自律の文脈でそれなりになじみがあると思います。現代におけるキャリアにおいて、バウンダリーレス・キャリアと共にニューキャリア論と呼ばれる存在です。
キャリアにアップもダウンもない!?
予定調和性の低い環境においてキャリアを構築するという点でホールやアーサーと同様の考え方をとるものの、サビカス先生はキャリアにおける意味性というものを重視しています。そこで頻繁に登場するのがメタファーです。
キャリアを、組織内において出世の階段を上がったり下がったりするという捉え方ではなく、個人が社会と相互作用しながら物語を創るという捉え方をしているようです。
なお、サビカス先生の論文を読むと頻繁にメタファーが出てきます。わかりやすいと言えばわかりやすいのですが、その世界観に慣れていないとなかなかとっつきにくいとも言えます(笑)。さらに言葉遊びも多く使われます。上記引用箇所の一文目などは"career"、"cart"、"car"、"carry(carries)"といった具合に「car」で始まる単語を羅列してきたりされます。この辺りもたのしめるようになると、マニアと呼べる段階になるのではないでしょうか。
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