見出し画像

【論文レビュー】ジョブ・クラフティング、再訪。:Bindl, Unsworth, Gibson & Stride(2019)

本論文では、社員による自発的な仕事の工夫(Job Crafting:以下JC)に①社員個人のニーズ(Individual Needs)が直接影響を与え、②制御焦点(原語は「Regulatory Focus」ですが、こんな訳で伝わりますかね?笑)が媒介的に影響を与えていることが明らかにされます。加えて、JCが職務における革新的パフォーマンス(Innovative Work Performance)に影響することも検証されています。

Bindl, U. K., Unsworth, K. L., Gibson, C. B., & Stride, C. B. (2019). Job crafting revisited: Implications of an extended framework for active changes at work. Journal of Applied Psychology, 104(5), 605.

影響関係については、検証された以下の仮説としてのモデル図をご覧いただくとわかりやすいでしょう。

スクリーンショット 2021-07-02 13.20.28

JCは、自分起点で自分のために職務で工夫を行うことです(詳細は以下)。しかし、本論文では、それが革新的パフォーマンスという組織において求められる行動(組織行動)にも影響することまでが導出されています。

制御焦点理論とは何か

本論文では、制御焦点というあまり耳慣れない概念が出てきます。これは、目標を達成しようとするときに個人が取ろうとする二つの志向性を表しています。具体的には、ポジティヴなことを促進しようとする促進志向(promotion oriented)と、ネガティヴなことを回避しようとする予防志向(prevention oriented)です。

JCとの関連で明らかにされたこととしては、第一に、JCに強い影響を与えるのは促進志向であるという点です。第二に、予防志向は相対的に弱い影響しか与えませんが、弱いけれども影響はあるということです。

制御焦点✖️JCと革新的パフォーマンスとの関係

ここまで述べてきた二つの制御焦点と四つのJC(細かくは端おりますが、タスク、関係性、認識というJCの元々の三つに加えてスキルが追加されています)との組み合わせで八つのタイプを設定し、それぞれが革新的パフォーマンスに影響を与えていることが示されています。

スクリーンショット 2021-07-02 13.22.14

まず、促進志向✖️JCの組み合わせでは四つとも革新的パフォーマンスに影響を与えていることがわかります。次に、予防志向については、5%有意水準ではありますが、予防志向✖️認識的JCが革新的パフォーマンスに影響を与えています。

個人のニーズと制御焦点✖️JCとの関係

これについては、バラバラであることがわかったことが大きな発見と言えます。以下の図では自律性(autonomy)、関係性(relatedness)、能力(competence)といった三つのニーズとの関係が描かれていますが、端的に言えば、ニーズによって仕事の工夫のあり方が異なることが示されています。

スクリーンショット 2021-07-02 13.31.34

バラバラであることが明らかになったということは、社員を十把一絡げに捉えて工夫を試みてもらうことは必ずしも有効ではないということを示します。つまり、結果として目指してもらう革新的パフォーマンスは共通のものでも、志向性や工夫のしかたは異なるものであり、その根元にある個々人のニーズをとらまえて対応することが求められるのです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?