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【論文レビュー】キャリア・アダプタビリティは日常のパフォーマンスにどのような影響があるのか?:Zacher(2015)

キャリアに関する意識と結果としての成果との関連性を明らかにすることは難しく、頭を悩ませている企画担当者も多いのではないでしょうか。本論文は、234名というやや少ない調査対象者ではあるものの、キャリア・アダプタビリティという心理的資源と、日常におけるアウトカム(タスクパフォーマンス、キャリアパフォーマンス、職務満足、キャリア満足)との関係性を明らかにしてくれています。

Zacher, H. (2015). Daily manifestations of career adaptability- Relationships with job and career outcomes. Journal of Vocational Behavior, 91, 76-86.

キャリア・アダプタビリティ

キャリア・アダプタビリティについては何回となく書いてきたのでここでは詳細を端折ります。トランジションにおいてキャリアを開発するための心理的資源、のようなものですが、詳細を知りたい方は以下をご笑覧ください。

キャリア・アダプタビリティと日常のパフォーマンス

本論文では、53名を対象とした試験的な調査の後に、234名の大学職員を対象とした実証研究を行っています。その際に、キャリア・アダプタビリティを説明変数に、タスクパフォーマンス、キャリアパフォーマンス、職務満足、キャリア満足の四つを結果変数に設定して階層的線形回帰分析を行っています。その結果が以下の表です。

p.83

ものすごーく乱暴に言ってしまいますと、個人の中での関係性を明らかにしている「Within-person predictor」の項目を見ていただければ概略は掴めます。さらに言えば、キャリア・アダプタビリティを一つの尺度として四つの日常的なアウトカムとの関係を見ているのがModel 1、キャリア・アダプタビリティの四つの下位尺度との関係を見ているのがModel 2です。二つのアスタリスク(**)が付されている箇所が有意な関係性がある、というように捉えていただければOKです。

詳細な結果

というわけで上記を踏まえて有意な関係性があるものを列挙すると、①キャリア・アダプタビリティ全体:全部、②関心:キャリアパフォーマンス、キャリア満足、③統制:タスクパフォーマンス、職務満足、キャリア満足、④好奇心:キャリア満足、⑤自信:全部、ということが明らかになったと言えます。

キャリア・アダプタビリティが日常のパフォーマンスと影響することはなんとなく感覚的にはわかるものの、その内容はなんなの?という問いに対する回答を示してくれる実証研究と言えます。

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