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社会学の古典を読む。:『シンボリック相互作用論』(H・ブルーマー著)を読んで。

組織文化や組織社会化といった組織論の概念を学んでいると、どのように組織やひとを見るのかという認識のあり方に興味が向いてきます。特に、レビュー論文を読んでいると、そうした認識のアプローチとして社会学に突き当たることになります。

私が目の当たりにしている研究対象での取り組みを考える上では、社会や組織を静的に捉えるタルコット・パーソンズ(学部以来はじめてこの人の名前を書いた気がします。笑)をはじめとした構造機能主義的な捉え方ではなく、動的な捉え方に興味があります。そこで今回扱うのは、構造機能主義を批判的に捉えたシンボリック相互作用論の主なテクストである本書です。

シンボリック相互作用論とは

本書はそこそこ厚いので読み通すのは少々難渋します。ですが、基本的には第一章を読めばシンボリック相互作用論の要諦は把握できます。まず、シンボリック相互作用論における前提から見ていきます。

【前提1】
人間は、ものごとが自分に対して持つ意味にのっとって、そのものごとに対して行為するというものである(2頁)
【前提2】
ものごとの意味は、個人がその仲間と一緒に参加する社会的相互作用から導き出され、発生する(同上)
【前提3】
意味は、個人が、自分の出会ったものごとに対処するなかで、その個人が用いる解釈の過程によってあつかわれたり、修正されたりする(同上)

こうした前提によって、自分自身への認識が構造機能主義的な1970年代当時の主要な社会学の見解と変わることになります。

'I'が'me'と相互作用するという認識

1970年代同時の主流の社会学では、外界への反応として自分自身の行動を理解するという認識を取っていました。それに対して相互作用という概念を自分自身にも当て嵌めることで自己認識をシンボリック相互作用論は変えました。

われわれは、自分自身に対して指示を行うという社会的な過程を通して、自分自身と相互作用する生命体として人間を認識する(17頁)

こうして'I'と'me'とが相互作用するという自己認識を行う人同士が集合体を形成するのが組織です。こうした集合体においては、お互いに影響を与えあい、お互いの行為を解釈し合い、行為を構成していくというプロセスになります。社会学における社会構成(構築)主義を提唱したバーガー+ルックマンと近しい感じも受けます。

おまけ(1)

研究方法と存在論・認識論については、以前取り上げた須田敏子先生の書籍が大変参考になるのでご関心のある方はどうぞ。

おまけ(2)

訳者解説欄に大変興味深い記載があります。以下を読んでいると、1970年代に南カリフォルニア大学にて心理学と社会学の修士号と社会学で博士号を取られた某師が想起され、思わず微苦笑しました。

著者は、社会学者にときおりみうけられるタイプの学者であるようで、大部の体型的な著作を次々と世に問うというよりは、自分の関心領域に関する理論的論文を各種の専門書・学術雑誌に随時公表するかたわら、自分の社会学思想を学生に教授していくことで、独自のネットワークを形成していったようである。(275頁)


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