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【読書メモ】職種による組織コミットメントの違いとは?:高木浩人著『組織の心理的側面 組織コミットメントの探求』(7/8)

第6章では組織コミットメントに何が影響を与え、何に影響を与えるのかについての考察がなされました。それを承けて第7章では、職種ごとに影響の差異はあるのかについて考察が為されます。

先行要因は職種によって大きな差異あり

本章では、一般事務・販売・サービス、製造・加工、技術職、といった多様な職種ごとにどのような差異があるのかを分析しています。それぞれに差異がある状況なのですが、特に興味深いのは技術職において、同僚との人間関係がよくなると愛着要素が低くなるという逆相関が見られている点です。

ここで考えられる一つの仮説は、技術職という専門性が高い集団においては、高度な技術を分かり合えるピア間での関係性がよくなると、技術のわからないその他の人々から構成される会社組織に対して愛着を感じなくなる可能性があるということです。

高度専門人材が求められる現代において、組織に対するコミットメントをいかに担保するかは大きな課題となるでしょう。同僚との関係性は愛着要素とネガティヴな関係があるわけですが、上司との関係性は愛着要素とポジティヴな関係を持っています。専門性の高い人材に対しても、上司という存在がいかに鍵となるかがここでもわかります。

行動へ与える影響も職種によって差異あり

結果変数に対しても影響は異なるのですが、興味深いのは、一般事務・販売・サービスにおいて愛着要素が勤勉さを低減するという結果です。

解釈は難しいと著者はしながら、一つの可能性として、愛着度が高い=居心地が良い=勤勉さを損なうという仮説を指摘しています。一言で言えば、なあなあの関係になってしまうということでしょう。

情緒的要素は内在化要素と愛着要素に分けるべし

これは第6章と第7章を合わせての著者の提言です。内在化要素は組織との一体感でありプロアクティブな行動を促すのに対して、愛着要素は組織と変わらない関係性を重視し変化を促す行動への阻害要因を時に示します。これは、上述した愛着要素が勤勉さを提言するという考察にも現れていると言えるでしょう。

つまり、同じ情緒的コミットメントといっても、影響を与える行動に関して、内在化要素と愛着要素とでは差異があります。行動に対する打ち手が異なるのですから分けるべきであるとする著者の主張には納得できると言えるのではないでしょうか。


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