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【論文レビュー】ジョブ・ローテーションは将来の個人の業績に影響するのか?:Kampkötter et al.(2018)

ジョブ・ローテーションはやや古い日本企業の人事運用としてネガティヴに捉えられがちな印象があります。そこで今回は、ジョブ・ローテーションが将来の個人の業績にプラスの影響を与えるという結論を述べているドイツの実証研究を紹介します。

Kampkötter, P., Harbring, C., & Sliwka, D. (2018). Job rotation and employee performance–evidence from a longitudinal study in the financial services industry. The international journal of human resource management, 29(10), 1709-1735.

調査概要

本研究でまず特筆すべきは極めて大規模な調査者を集めたものであるという点です。ドイツの金融業界に勤める約15,000人のデータを対象としています。ここまで規模が大きいと論文内の人数の記述の前に「約(about)」という言葉が入るのですね。

個人の業績としての指標は賞与を取っています。業績の場合は個人の主観的な評価による設問項目で取るケースが多々ありますが、他者によるリアルな短期的評価が反映される賞与で見るのは納得的ですし貴重なものと言えます。

高業績者よりも低業績者の方がローテは多い

ではどのような人がジョブ・ローテーションを経験しているのでしょうか?事前の業績で見た場合、高業績者よりも低業績者の方がジョブ・ローテーションを行う頻度が多かったと結論づけています。

これは必ずしも日本企業では当てはまりづらいことかもしれません。ただし、日本においても定期的なジョブ・ローテーションにおいて職務が大きく異なる異動を頻繁に行うところは減ってきている印象ですので、現状では、本論文におけるドイツ企業のような傾向になってきている可能性もあるので留意は必要でしょう。

ローテは将来の業績に好影響

ジョブ・ローテーションの効果として、まず全体像としては個人の将来の業績にプラスの影響を与えることが検証されました。さらに細かく言えば、大きく内容が異なる職務への異動よりも、同じ職種の内部でのローテーションの方が業績にポジティヴな影響を与えるということが提示されています。

ローテの効果は高業績者に限られる!?

しかし、ジョブ・ローテーションが業績にプラスの影響を与える対象者を具に見ていくと相違があることも明らかになりました。

具体的に言えば、異動前の業績が高かった人と低かった人とに分けた場合、高業績者は異動後の将来の賞与にプラスの影響を与えたことが有意に言えるのに対して、低業績者の場合にはプラスの効果が実証されなかったと報告されています。なかなかつらい現実ですね。。

余談

普段読む論文はキャリアとか組織行動論関連の領域のものが多く、HRMの領域でかつ英文のものはあまり読みません。久しぶりに読むと使われている言葉が異なって面食らいます。

ただ、英語を用いていた仕事としては、人材開発よりも海外人事とかHRBP時代の方が長いので馴染みのある言葉が出てきて懐かしかったです。「Job Family」とか最初に仕事で見た時の違和感を思い出してニヤニヤしながら読みました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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