見出し画像

【読書メモ】道を拓く人の原動力:『サビカス キャリア構成理論』(マーク・L・サビカス著)第3章

本書は、キャリア構成理論キャリア・アダプタビリティで有名なサビカス先生が2019年に出版した『Career Construction Theory: Life Portraits of Attachment, Adaptability, and Identity』の邦訳版です。研究で必要なので泣く泣く原著を読みましたが、いやはや日本語で読み直せるのはありがたいです。翻訳者の方々に感謝あるばかりです。監訳者の方の推奨に従い、キャリア・カウンセリングでの一つ目のケースを扱った第三章から読むことにしてみました。

親からの影響

キャリアを考える上でライフとの関連は必要不可欠です。日本企業では、キャリアを考えることが難しいという社員がそれなりにいますが、難しく考えずに日常の生活場面や幼少期の人格形成の過程をヒントに、キャリアを考えることができます。

第三章で扱われているロバートさんのケースでは、両親の影響が色濃く反映されています。具体的には、両親が有している価値観と自身への教育です。三つの幼少期の記憶について語ってもらうのですが、それぞれの物語から彼の現在の生活様式が構成されている様がよくわかります。

きょうだいの影響

両親の影響の大きさを考えると、きょうだい間では近しい人格になるのではないかと考えてしまいます。しかし、他の通常のきょうだいと同様、ロバートさんもきょうだいとは異なるようです。彼の場合には、十歳以上離れた兄と姉がいる末っ子です。親のような存在である人物が四人もいる家族の中で育ったことが彼の人格形成に強く影響を与えたとしています。

家族がどのような構成になっているかは、「対人関係の基盤を構成するもの」(134頁)です。そのため出生の順番がもたらす影響は大きいものがあると言えます。

ロバートは、家族が自分に何を要求しているのか、家族の中でどのように動けばいいのかを学ぶことで、自分にとって安全な居場所を作りました。ロバートは、自分がどのように家族の中に溶け込み、どのように目立つかを見極めることで、自分の家族構成を理解し、その理解に基づいて職業アイデンティティを形成し、キャリアを構成することになったのです。

134頁

キャリア・アダプタビリティとの関連

私の研究の関心上(?)、彼の物語においてキャリア・アダプタビリティがどのように位置づけられるのかに興味があります。本章では以下のような記述がありました。

彼はキャリアの状況を改善するために活用できるキャリアアダプタビリティ資源を発達させました。職業の発達課題やキャリアの転機に直面したとき、ロバートは<調整力>と<適応レディネス>というキャリアアダプタビリティ資源を活用し、統合的に対応するように自分を動機づけました。ロバートの、自分で決めた目標を実現させる適応レディネスは、キャリア構成理論(Savickas, 2013)で強調されている四つのアダプタビリティ資源のすべてと関係していました。

122頁

キャリアとライフを物語る上で、心理的資源であるキャリア・アダプタビリティがどのように関連するのかについて興味深く読める箇所でした。

おまけ

原著を読みたい!という奇特な方は、以下を併せてどうぞ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?