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【論文レビュー】リアリティ・ショックは何から影響を受け、何に対して影響を与えるのか?:道谷(2007)

新しく組織に参加した人はリアリティ・ショックという期待と現実との差を感じることがままあります。本論文では、リアリティ・ショックに影響を与える個人要因と組織要因を明らかにし、その上で将来への見通しを媒介して離転職意思に与える影響について考察しています。

道谷里英. (2007). 新入社員の組織社会化に影響を及ぼす要因- 初期キャリアの発達課題の視点から. 産業・組織心理学研究, 20(2), 3-14.

結果図

個人要因と環境要因とでリアリティ・ショック(期待と現実のギャップ)に影響を与えるものはか、リアリティ・ショックが将来の見通しの何に影響し、その結果として離転職意思にどのように影響するかを本研究では明らかにしています。以下の図を見てわかる方は、ここまででOKです。

p.14

以降は細かな結果について興味深いものを見ていきます。

キャリア成熟度はリアリティ・ショックに影響しない

上の図でまず興味深いのはキャリア成熟度がリアリティ・ショックに影響しないという点です。著者の当初の仮説では、キャリア成熟度がリアリティ・ショックに影響すると考えていたようです。しかし残念ながらその仮説は棄却され、見通しのうちの明確な将来像と自信に直接影響し、それらを媒介して離転職意思に影響しているという関係性が明らかになりました。

リアリティ・ショック→見通し→離転職意思

リアリティ・ショックから見通しの下位3次元への影響はいずれも1%水準で有意であり、さらに下位3次元のいずれからも離転職意思への影響も1%水準で有意です。

リアリティ・ショックから見通しへはマイナスの関係、見通しから離転職意思へもマイナスの関係なのでちょっとわかりづらいです。端的に言えば、リアリティ・ショックが大きければ見通しを描きづらくなり、その結果、離転職意思が高まってしまう、という関係性が明らかになったということです。

最後までお読みいただき、どうもありがとうございました!

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