見出し画像

【ワイクを読む!(2/9)】組織化について考える技法:『組織化の社会心理学[第2版]』(カール・E・ワイク著)

第1章で組織化について論じたワイクは、本章で組織化を考えるための観点について六つのトピックスを取り上げています。独特のユーモアとアナロジーがふんだんに盛り込まれているため、訳すのは大変だっただろうなぁと訳者に敬意を払う章でもあります。

六つの思考の技法として提示されているものは以下の通りです。

1 自分が何をしているかを知ろう。
2 トリレンマを覚悟しよう。
3 "進行形"で考えよう。
4 メタファーを変えてみよう。
5 おもしろさを開拓しよう。
6 ミニセオリーを喚起しよう。

特に面白いと感じた1に絞ってまとめてみます。

組織行動とは何か

1が興味深いのは、組織行動(Organizational Behaviour)についてのワイクのやや独特な考察があるためです。自分が何をしているかを知るためには組織行動が示す対象を知る必要があるとしながら、組織行動という言葉はあまり好きではないとして、以下のように述べています。

組織行動という言葉が厄介なのは、その意味する行動というのが、ある特定の場所の内部で起こる行動なのか、ある場所に関連した行動なのか、あるいは組織にコントロールされた行動なのか、はたまた組織を創る行動なのか等々、よくわからないからである。(41頁)

行動の対象について、ワイクはまずミードの議論を引いて迫ろうとしています。ミードは、別のnoteで何十回と書いてきているので詳細は割愛しますが、行動という現象を他者への反応という観点で捉えています。つまり、反応のレパートリー(response repertories)が、自分が何に注目するかを規定するというわけです。

ミードはオープンに他者との関係性について述べているわけですが、ワイクは、そこから組織に焦点を絞って探究を深めます。組織における行動とは「事象的で過程志向的な行動」(45頁)であるとした上で、プロセスとしての相互作用に着目すべきであるとしているのです。

組織が行為すると言うとき、過程に組み込まれる素材は孤独な行為でなく二重相互行為だということ、そして結果を左右するのは個々人の資質ではなくて組み立てすなわち相互作用のパターンだということはことは銘記されてよい。(46頁)

個人ではなく組織としての行為という点では、組織における相互作用と個人におけるIとMeとの相互作用という二重の相互作用が生じるということをワイクは述べているのではないでしょうか。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?