【徹底解説】キャリア・アダプタビリティ尺度(1)4つのadapt:Savickas & Porfeli(2012)
キャリア・アダプタビリティを測定するための尺度について書かれた論文を、数回に分けてなるべく詳しく解説していきます。今回はadaptというキャリア・アダプタビリティという概念の中にも含まれる言葉をキーワードにしてまとめます。
adaptの意味
「適応する」と訳されることの多い「adapt」という単語をサビカス先生はこだわって使っています。まずadaptという単語の原義について、ラテン語の語源まで遡って本論文で解説しています。
ただサビカス先生は、他の論文でも同じようにadaptの解説を行っていて、私は何度もその解説をまとめているのでここでは割愛させてもらい、その代わりに以前まとめたnoteを貼りますのでご関心のある方はご笑覧ください。
このadaptという言葉を基にして4つの概念をサビカス先生は続けて解説しています。最初に見取り図として関係性を補助線的に示しますと、①adaptivity(適応性)→②adaptability(適応能力)→③adapting(適応行動)→④adaptation(適応)、という関係性です。
本論文では④③①②の順に書かれていますが、このnoteでは、関係性の順番に合わせて①②③④の順にまとめます。
①adaptivity(適応性)
adaptivityは、概念としての位置付けは特性です。
サビカス先生は、他の論文ではadaptivityをadaptive readinessとして表現していますが、適応に関する準備ととらえれば特性としての位置付けは理解しやすいかもしれません。
②adaptability(適応能力)
①adaptivityから影響を受ける概念として位置付けられるものが②adaptabilityです。adaptabilityを説明する段落の冒頭で、サビカス先生はしれっと「Career adaptability is…」というようにキャリア・アダプタビリティとして表現してそれ以降も一貫してcareerを頭につけて解説しているところから、これがキャリア・アダプタビリティとなります。
キャリア・アダプタビリティは心理社会的(psychosocial)な資源/能力であるとサビカス先生はしています。後述する③適応行動を取ることを促す存在として位置付けられることがわかります。
特性のように長期的に変わらないあるいは変わりづらいものとは異なり、少なくとも特性よりは変化する存在として捉えられています。次回以降に解説するのは、このキャリア・アダプタビリティを測定する尺度についてになります。
③adapting(適応行動)
adaptingの概念としての位置付けは、訳語にも入れている通り行動です。②adaptabilityという心理社会的資源を用いて、変化に対応するために取る行動のことを指しています。キャリア開発課題への習得、キャリア以降への対処、仕事におけるトラウマや偶発性への適応、といったものが具体的には当てはまるとサビカス先生は例示しています。
④adaptation(適応)
adaptationは、サビカス先生は他の論文でadaptation resultと表現している通り、ここまで述べてきた特性→能力/資源→行動という適応プロセスの結果として位置付けられるものです。
環境や周囲との良い適合(good fit)を伴う、まあいわば良い結果としてもたらされるものと捉えれば良いでしょう。
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