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【徹底解説】キャリア・アダプタビリティの起源(2)デューイと機能主義:Savickas(1997)

スーパーの理論を論じるために、スーパーが機能主義の影響を受けていたということをサビカス先生は述べています。さらに、その機能主義を先導した人物の一人としてジョン・デューイが登場します。

Savickas, M. L. (1997). Career adaptability- An integrative construct for life‐span, life‐space theory. The career development quarterly, 45(3), 247-259.

機能主義者としてのスーパー

スーパーは機能主義のアプローチでキャリアを捉えようとしたとサビカス先生はしています。機能主義はデューイによって確立されたものと本論文ではされていて、他の論文ではジェイムズであるとも言われています。いずれにしろ、プラグマティズムの影響を色濃く受けたものと考えられます。

機能主義心理学は「心は何のためにあるのか」という目的を明らかにしようとするものです。例えば以下のようなサイトを参照されると良いでしょう。

スーパーはコロンビア大学で1945年から1975年まで実に30年間教鞭をとっています。コロンビアは、デューイが約半世紀近くにわたって勤務した大学であり、スーパーはコロンビアで機能主義に濃く触れたと考えられます。

機能主義理論

機能主義心理学の影響を受けたスーパーが提示したライフスパン・ライフスペース理論もまた機能主義に基づいた理論であるとサビカス先生ははっきりと述べます。

Life-span, life-space theory is a functional theory

p.251

そして、スーパーの理論を発展させるためにも、彼が提示したキャリア成熟、自己概念、ライフスペースといった様々なセグメントを統合することが必要である、そのためにはライフスパン・ライフスペース理論を批判的に検討することが重要であるとサビカス先生は書いています。

クランボルツとの違い

ライフスパン・ライフスペース理論への批判として、スーパーが最晩年に自身の諸理論を統合しようとしたために充分に統合しきれていないとされています(Swanson(1992)など)。スーパーは、学習意思決定という概念によって統合の方向性を検討していたようで、クランボルツのプランド・ハプンスタンス理論はこの流れに沿った発展段階と言えますし、サビカス先生も本論文で言及しています。

しかしサビカス先生は、学習と意思決定による統合の可能性を受け入れながらも、自分自身として適応に着目したいとしています。

Despite the clear potential of learning and of decision making as bridging constructs, I prefer to speculate on a different construct: adaptation.
(ざっくり和訳)
架橋するための構成要素としての学習と意思決定の潜在的な可能性は明らかではあるものの、私は別の構成要素、つまり適応について施策することを好む。

p.252

「好む(prefer)」って個人的な意見じゃないの?とつっこみたくなるものの、論文でこうした意見を述べられるのってちょっとすごいですよね。強い想いがあるのでしょうから、読み進めてその心を明らかにしていきたいと思います。

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