【レポート】第4章「求められる「変化適応能力」の養成と人事管理の課題」を読んで:連合総研「人材育成と企業連携」報告書(2024年10月)
連合総研の「産業構造の大きな変化などをふまえた就労支援と能力開発の一体的な仕組みの実現に向けた調査研究委員会」による、企業において求められる変化適応能力に関するレポートがなかなか興味深い内容でした。千葉経済大学の藤波美帆准教授が執筆された第4章に焦点を絞って感想を書きます。なお、本章では変化適応能力を「環境の変化に柔軟に適応し変化するための能力」(p.69)と定義していますので、その認識でお読みください。
変化適応能力が求められる時代
では企業組織において変化適応能力はなぜ求められるのでしょうか。直感的にイメージできるものの、本レポートでは企業側と個人側のそれぞれの側面から述べておられます。まず企業側の背景としては以下のような内容です。
VUCAという言葉は言い古されてきた印象もありますが、環境変化に企業として対応するために個人に変化適応能力が求められるということですね。他方で、個人にとっては以下のように説明がなされています。
「もの」から「こと」へといった挑戦機会を創出するために必要であり、中長期的にはキャリアを自ら構築していくことにもつながるので変化適応能力が必要だという理由のようです。いずれも理解しやすい内容に思えます。
変化適応能力を高める手段
では企業側からも個人側からも求められる変化適応能力を高めるために企業は何ができるのでしょうか。著者はその枠組みとして、人材育成、異動・配置、人事評価の3点で以下のように整理しています。
図表2では、上段が社員のリスクが相対的に低いもの、下段が高いもの、というように分けています。これは実務に携わる方々からは異論が多々ありそうな分け方なので、打ち手を検討するための枠組みを提示してくれたものとして、ざっと見ていただくのが良さそうです。
能力強化という文脈で物事を捉えますと、ともすると育成施策だけに偏りがちになりますが、異動・配置もまた重要です。異動・配置のアプローチには、企業主導型のものだけではなく従業員の発意を基にして組織との双方向コミュニケーションで行うものも重要であるという指摘は重要でしょう。
事例も参考になる
こうしたアプローチの事例について、東日本電信電話、ボッシュ、日本特殊陶業、三井金属鉱業という4社での取り組みが簡潔に紹介されています。参照することで自社にとっての示唆を得られることもあるのではないでしょうか。
最後まで目を通していただき、ありがとうございました!