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【ワイクを読む!(9/9)】組織化の意味するもの:『組織化の社会心理学[第2版]』(カール・E・ワイク著)

最終章の冒頭では、いかにもワイクらしい、ウィットと皮肉がないまぜになった一流の考察が展開されます。

芸術と科学の境界があいまいになるのは明らかだ。組織理論の研究者はあまりにも狭くあまりにも精密に仕事をしているようなので、われわれはそんな彼らにリアリティーのより大きな部分に取り組むよう勧めてきた。そのためにはきっと詩や歌や知の巧みが科学と一体にならなければならないのだろう。(304頁)

組織とは何か

本書では、全編にわたって組織化とは何かについて触れてきました。組織化とは、①生態学的変化、②イナクトメント、③淘汰、④保持という四つの要素から成るもので、本書の後半ではこれらの四つの要素について触れられてきました。

それぞれの観点を踏まえて、本章でワイクは改めて組織とは何かについて言及しています。

組織とは、伝説の精緻化、神話の創造、過去の物語化や(自らの経験の中から注意を払うべく選ばれた)エピソードの脚色にその多くの時間を割いているものだと確信するので、アイディアやメタファーそれに想像力や思考についてもかなりの考察を加えている。(305頁)

組織というものについて、客観的な存在としての側面から捉えるのではなく、主観的で生成的な存在としての側面から捉えていると言えます。生成的な組織観を伝えるために、ワイクは、本書においてアナロジーや例示がふんだんに用いてきたのでしょう(たぶん)。

生成的な組織については、組織文化に関する坂下先生の考察がわかりやすく、ワイクの難解ななぞなぞを解くヒントになります。

生成的な組織=システム

組織が生成的で捉えるということは、組織は常にダイナミックに動くものであり、個々人の主観の揺れ動きによって変化するオープンなシステムであるということを意味します。そのため、ある人や事象が異なる人や未来の結果に単線的に結びつくということはありません。

高度に相互依存的なシステムでは、いかなる行為も枝状に広がってゆき、広範囲に及ぶさまざまな結果をもたらす。また、通常はあまり主張されていないことだが、これらの結果のすべてが同時に起こるわけではない、ということも同様に重要な点である。ただちに起こるものもあり、遠くで遅れて起こるものもある。(316頁)

ポイントは相互依存的であるというところでしょう。しつこいですが、社会学の用語に言い換えれば相互作用ということです。Aという事象がBという事象とお互いに影響を与え合うという関係であり、それが閉じた関係性なのではなくCやDとも将来時点において影響し合うというものがシステム系としての組織です。

そのため、「今・ここ」における状態性だけで捉えることに加えて、中長期的な影響度合いや、遠く離れた存在への影響といった点を捉えることが重要です。システム・シンキングでいうところのループ図をイメージすれば良いでしょう。

あとがき

とにかく終わった、やれやれ。というのが第一感です。読み直すなどという苦行は行わないでしょう。読書会とかあれば、他の方がどのように読んだのかをぜひ聴いてみたいとは思いますが、今はおなかいっぱいです。


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