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【論文レビュー】プランドハプンスタンス理論を用いたスキルを測定する尺度がある!!:浦上他(2017)

私はキャリア・アダプタビリティを研究しています。なので連日のように他国で行われたキャリア・アダプタビリティ尺度の実証研究をnoteで挙げています。ただ、学部や最初の修士の際にプランドハプンスタンス理論を日本で先駆的に研究してこられた花田先生のゼミにいたため、この理論もけっこう好きです。今回は、プランドハプンスタンス理論を用いたスキルの測定尺度を開発した論文を読んでみました。

浦上昌則, 高綱睦美, 杉本英晴, & 矢崎裕美子. (2017). Planned Happenstance 理論を背景とした境遇活用スキルの測定. アカデミア. 人文・自然科学編, (14), 49-64.

環境の変化と自身の変化

「計画された偶発性」という言葉から、プランドハプンスタンス理論が着目しているのは外部環境の変化であると捉えられがちです。しかし、花田先生がプランドハプンスタンスを私たちに解説する時には、外部環境の変化とともに自身の価値観の変容という内的な変化も含むものであると口を酸っぱくして仰られていました。

その際に併せておっしゃっていたのは、将来を予見してバックキャストでいまを捉えることも現実的ではないし、ライフコースのような個人の長期的な将来像からのバックキャストもできないので静態的なアプローチはキャリア開発にはそぐわないということでした。そのため、自ら変化を創るための一歩を踏み出していくという動的なアプローチが大事であるというお話でした。

5つのスキル

プランドハプンスタンス理論を提示したMitchell et al. (1999)では、計画された偶発性理論を基にしたキャリア開発行動のスキルについて5つを定義しています。著者たちはそれを邦訳した上で簡潔にポイントをp.51に提示してくれています。

  1. curiosity:新しい学習機会を探索する

  2. persistence:障害にもかかわらず尽力する

  3. flexibility:態度や状況を変える

  4. optimism:新しい機会を可能で達成できるものと考える

  5. risk taking:不確かな結果にもかかわらず行動を 起こす

尺度化は6つのスキルとして測定

これら5つのスキルにはグラノベッターの弱い紐帯(weak ties)が強く関係するであろうと著者たちは考え、上述した5つのスキルに紐帯スキルを加えた以下の6つのスキルを想定し、p.52で以下のように提示しています。

  1. 興味探索スキル(curiosity に対応)
    興味の幅を広げたり,興味のあることを探索,探求するスキル

  2. 継続スキル(persistence に対応)
    苦労することや手間のかかることでも,それを持続するためのスキル

  3. 変化スキル(flexibility に対応)
    自分の考え方や態度,自分の置かれている環境を,より適応的なもの,より望ましいものへ変化させるスキル

  4. 楽観的認識スキル(optimism に対応)
    結果やプロセスに対してポジティブな見通しをもつスキル

  5. 開始スキル(risk taking に対応)
    結果や成果が 不確かな場合でも,回避せずそれを始めるスキル

  6. 紐帯スキル
    人と人との つながりである紐帯,特に弱い紐帯をできるだけ多くつなげ,維持するスキル

各下位次元の設問は以下のとおりです。

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p.56

因子分析の結果として除いた項目を削除しても30項目というなかなか多い設問になっています。

おまけ

冒頭で述べた背景があるため、今でもプランドハプンスタンス理論関連の話を友人知己から振られることが多々あります。私の研究対象であるキャリア・アダプタビリティはまだそれほど日本で有名でないため、外部での研修依頼でもプランドハプンスタンスの方が多いです。そのため、こうしたプランドハプンスタンス理論を用いたスキル尺度を押さえておくのも良いのだろうなと感じました。


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