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【論文レビュー】キャリア・アダプタビリティは個人だけではなく組織にとっての成果にも良い影響を与えます。:Haibo et al.(2018)

本論文が興味深いのは、キャリア・アダプタビリティが個人にとっての成果に対して影響を与えるだけではなく、組織にとっての成果にも影響を与えることを実証している点です。両者の関係性をキャリア・アイデンティティが調整している効果についても検証しています。

Haibo, Y., Xiaoyu, G., Xiaoming, Z., & Zhijin, H. (2018). Career adaptability with or without career identity- How career adaptability leads to organizational success and individual career success?. Journal of Career Assessment, 26(4), 717-731.

全体像

本論文での仮説を図示すると以下のようになります。

p.721

キャリア・アダプタビリティから影響するものとして組織的な成功と個人的な成功の二つがあるとしています。その上で組織的な成功として離職意図と職務パフォーマンス、個人的な成功としてキャリア満足と年収の二つがあがっています。

キャリア・アダプタビリティからの影響は全て仮説通り

この仮説に対して、キャリア・アダプタビリティから組織的な成功の二つの変数と個人的な成功の二つの変数のいずれに対しても影響があったことが実証されました。なお、離職意図に対しては負の相関関係であるという仮説が検証されたとしています。つまり、キャリア・アダプタビリティが高いと離職意図が低いという関係です。

個人的な成功の二つとの相関関係はイメージ通りです。ただ、組織的な成功として離職意図と職務パフォーマンスに影響しているというのは組織にとって興味深い示唆を提供していると言えるのではないでしょうか。

キャリア・アイデンティティの調整効果は限定的

キャリア・アダプタビリティからの直接的な効果は仮説通りでしたが、キャリア・アイデンティティによる調整効果は一部が支持されていません。具体的には、離職意図、キャリア満足、年収については調整効果が見られたものの、職務パフォーマンスについては仮説が支持されませんでした。

著者によればキャリア・アイデンティティと職務パフォーマンスとの間の相関関係が弱いことが、キャリア・アイデンティティによるキャリア・アダプタビリティから職務パフォーマンスへの影響を調整効果を検証できなかったのではないかということです。

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