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【論文レビュー】マッチング型・発達型のキャリア理論の系譜:坂柳(1990)

先日、ある勉強会に参加して対話する過程で、様々なキャリア理論を深掘りしたいなという意欲が高まりました。特定の概念の背景を知るためには理論の深い理解は必要ですし、キャリアって概念がたくさんあるのでそれぞれの関係性を考察するためにも必要かなという思いです。まずは日本語で見取り図を得ようとすると、やはり坂柳先生に辿り着くことになるわけです。

坂柳恒夫. (1990). 進路指導におけるキャリア発達の理論. 愛知教育大学研究報告, 39, 141-155.

マッチング型・発達論型の見取り図

本論文では、キャリア理論を内容と過程とに分けて説明を試みています。モティベーション理論が1960-1970年代に整理される際に、二要因理論をはじめとした内容アプローチと、期待理論などの過程アプローチに大別された流れと同じなのだと思われます。

孫引きになってしまうのですが、坂柳先生は以下のように先行研究を抜粋する形でそれぞれの理論について比較しておられます。

p.152

誤植が多いので引用の際はご注意を

手書き時代の論文にはありがちですが、本論文にも誤植が散見されます。坂柳先生が書かれたものを後でどなたかが入力した際に起きたエラーかと推察しますが、特に人名の誤植が多いので引用の際にはご注意ください。

p.144

上記の貴重な理論の紹介の中に複数箇所あるので気づいた点だけ指摘しておきます。

  • (誤)Gelatt, A. B. → (正)Gelatt, H. B.
    クランボルツに加えてジェラットもいるわ!と思っていたら、ファーストネームの間違いが。。AとHって手書きだと混同しやすいのかもですね。

  • (誤)Grites, J. O. → (正)Crites, J. O.
    「グ」ライツってどなた??と思っていたのですが、ファーストネームとミドルネームがクライツと同じなので、クライツのことなのでしょう。キャリア成熟は発達理論に位置付けられると思われますので。

RIASECを物語に位置付けたサビカス

職業選択理論を提唱し、RIASEC(いわゆる六角形モデル)を用いた職業選択カウンセリングで有名なホランドは上の二つの表にも出てきますし、本論文で随所に登場します。RIASECは、内容的アプローチであり静態的なマッチング型のキャリア概念として位置付けられますが、それを動態的なものとして位置づけ直したのがサビカスです。

↑は『サビカス キャリア構成理論』の読書会で私が解説した資料の一部ですが、初職に就職する際のマッチングに活用するという目的とともに、自身のナラティヴを意味づけるものとしてRIASECを用いる、というようにも位置付けられているのです。


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