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【論文レビュー】キャリア・アダプタビリティと組織コミットメントの関係が面白い!:Rudolph et al.(2017)

本論文では、キャリア・アダプタビリティ(career adaptability)が何から影響を受け何に影響を与えているのかに関する先行研究を分析しています。キャリア・アダプタビリティはキャリア構築理論(career construction theory)を構成する概念の一つであり、環境変化に適応しながらキャリアを構築していく能力です。この概念を用いたこれまでの研究とこれからの研究の展望を見通すことができるありがたい論文です。

Rudolph, C. W., Lavigne, K. N., & Zacher, H. (2017). Career adaptability- A meta-analysis of relationships with measures of adaptivity, adapting responses, and adaptation results. Journal of Vocational Behavior, 98, 17-34.

2012年から研究が激増

キャリア・アダプタビリティをサビカス先生が最初に提示したのは1997年で、その後に2002年と2005年にも引用件数の多いものを書かれています。その後、2012年にサビカス先生がPorfeliとの共著でキャリア・アダプタビリティの尺度(CAAS; Career Adapt-Abilities Scale)を提示したことで論文数が一気に上がっていることが以下のグラフでよく分かります。

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面白いのは組織コミットメントとの関係性

キャリア・アダプタビリティ(下図の左から二番目)が何から影響を受けて何に影響するのかの仮説が以下です。結論的にはほぼ全てで影響が見られていることを本論文は述べているので、ほぼほぼ以下をそのまま理解いただければ大丈夫です。例外だけこのあと説明します。

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影響関係が見られなかった中で最も面白いものは、結果(Adaptation Results)変数として含まれている組織コミットメントとの関係です。以前、組織コミットメントの三次元を扱った際にそれぞれの次元で他の概念との関係性が変わるということに触れましたが、情緒的コミットメント(affective commitment)はキャリア・アダプタビリティと関係する一方で、規範的(normative)と継続的(continuance)は関係が見られなかった、と結論づけています。

この結果が面白いと感じたのは、キャリア自律も同じような影響関係を持っているという点です。以前も取り上げた日本の大企業での調査の結果として、堀内・岡田(2009)は、キャリア自律は情緒的コミットメントには影響するが、功利的コミットメントには影響しないとしています。

組織コミットメント以外の例外は、在職期間と性別というデモグラフィック・データのみで、まあたしかにそうだよなという感じです。私が何に基づいてこうしたことを言っているかを示すために図表を引用します。英語 and/or 統計に苦手意識を持っていらっしゃる方には目に毒かと思いますので、無視してくださいませ。

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今後はライフとの関連も

本論文では職務における概念との関係性に焦点が当たっていました。ただ、今後の展望のパートでは、主観的健康(subjective health)、生活の質(QOL)、丈夫さ(hardiness)、レジリエンス(resilience)といったライフ関連の概念とキャリア・アダプタビリティが関連しているとする先行研究についても触れています。キャリアとライフは統合的に捉えるものとも言えますので、今後の研究領域として深掘りできる領域のようです。

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