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【論文レビュー】台湾版のキャリア・アダプタビリティ尺度:Tien et al.(2012)

Savickas & Porfeliのキャリア・アダプタビリティ尺度開発論文では、13か国での調査が行われています。そのうちの一つである台湾での調査について本論文ではその結果が報告されています。

Tien, H. L. S., Wang, Y. C., Chu, H. C., & Huang, T. L. (2012). Career adapt-abilities scale—Taiwan form: Psychometric properties and construct validity. Journal of Vocational Behavior, 80(3), 744-747.

スコアの傾向

まず24設問・4下位尺度の記述統計を見ていきましょう。

p.745

数値は全般的に高いです。四つの下位尺度ともに平均値が4を超えるという状況です。注意を要するのは、台湾では他の12か国と異なって、6件法で調査したものを5件法に捉えなおすという計算をしています。そのため、少し値が高くなった可能性はあると言えます。

他方で、中国とほぼ同様のスコアの高さなので中華圏は少々高く出ている可能性があり、6件法に因るものというよりも文化差による高さとも解釈できそうです。

天井効果はない

アメリカや中国での調査では、天井効果があるとも解釈できるスコアだったのですが、台湾では天井効果や床効果は見られないように思います。

また、中国語版ではクロンバックのαが低い数値が気になったのですが、台湾での調査では非常に良好な数値になっています。

モデル適合度

台湾での調査については、Savickas & Porfeliの尺度開発論文内でRMSEAが台湾は少々高かった、という言及があります。実際、本論文によればRMSEA=0.078とやや高い値です。

ここのディフェンスをどのようにしているかが気になっていたのですが、シンプルにSEMの適合度についてガイドを示しているHu & Bentler(1999)を用いています。私が参照しているHooper et al.(2008)でもRMSEAは0.08を切っていれば適合していると判断できるとしているので、本論文でのRMSEAの結果値もOKという判断にしているようです。


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