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【論文レビュー】ハイ・パフォーマーの中途入社後の組織適応は何が違うのか?:尾形(2018)

新しい組織に参画した後にその組織に馴染むことを組織適応と言います。著者は、中途入社者の組織適応において、ハイ・パフォーマーとロー・パフォーマーでは特徴が異なるということを本論文で明らかにしています。

尾形真実哉. (2018). 中途採用者の組織適応に関する量的比較分析 入社方法と主観的業績に焦点を当てて (Doctoral dissertation, Konan University).

ハイ・パフォーマー

測定の結果としてハイ・パフォーマーかロー・パフォーマーかを明らかにするのはなかなか難しいものがあります。研究においては、主観的業績を本人回答で行った結果を以てハイ・パフォーマーかロー・パフォーマーかを峻別することが多く、本研究でも同様です。

この辺りは現場で実務を担当している方からすると、「業績評価の高低で良いのでは?」と思われるかもしれません。ただ、人事担当やマネジャーの場合には、中途入社直後の業績評価はあまり高低が明確に分かれないケースが多いこともお分かりかと思います。こうした状況から、中途入社者の業績の高低については主観的業績を以て評価することが多いと言えます。

ハイ・パフォーマーの特徴

本調査では、ハイ・パフォーマーが13名、ロー・パフォーマーが17名というようにNが非常に少ないものです。そのため、今後の研究に活かすための狙いが強い研究と言えそうです。

ハイ・パフォーマーとロー・パフォーマーとの比較をまとめたものが下表です。すごく乱暴に言えば、10%有意以上で差が出ているものはt値の欄に印をつけて行を灰色にハイライトしてくださっているので(ありがたや)、そちらについてはハイ・パフォーマーとロー・パフォーマーで差があったのだなーと理解いただければと思います。

p.76

同僚サポートをどう考えるか

表を見ていただきますと、直観的に感じていることを踏まえて「まあそうだよねー」という印象を抱く結果なのではないでしょうか。ただ、一点だけ、少なくとも私の直観的な印象と異なったのが同僚サポートです。

上の表を再度見ていただくと、同僚サポートについてはロー・パフォーマーの方がハイ・パフォーマーよりも有意に高く出た、というのがこの表の言わんとするところです。これ、ちょっと意外ではないでしょうか?

同僚サポートを形成する設問を詳しく見てみますと、以下のようになっています。

p.70

著者も考察で述べているように、同僚サポートは中途入社者にとって大事なのは間違いないとは思われるものの、細かく丁寧に支援しすぎてしまうと、「まだ自分は一人前にできないのだ」という思いから主観的業績が低くなる、ということがあるということなのでしょう。オン・ボーディングは繊細で難しいものなのですね。

おまけ

著者は組織適応や組織社会化の研究者です。中途入社に関する研究を一般書としてまとめておられますので、組織適応の全般について学びたい方は以下の書籍を読まれると確認できます。

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