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【読書メモ】組織コミットメントって何と関係するの?:高木浩人著『組織の心理的側面 組織コミットメントの探求』(6/8)

本章では、組織コミットメントが何から影響を受け、何に影響を与えるのかについて、著者が行った定量調査からの分析結果が明らかにされています。社員の帰属意識を表す概念として組織コミットメントを著者は捉えており、「内在化要素、愛着要素、規範的要素、存続的要素で表される、個人の組織への帰属意識」(128頁)として定義しています。

組織コミットメントに影響を与えるもの

組織コミットメントに影響を与えるものとして明らかとなったものは職場における人間関係です。本調査では上司との関係性と同僚との関係性とに峻別して分析がなされており、組織に対して一体感を抱くような存続的要素と関連したのは上司との関係性のみであったとのことです。

つまり、同僚との関係性が良好であることは組織コミットメントに影響を与えるものの、組織にインボルブして取り組むという下位次元に影響を与える鍵は上司との関係に依拠するということが本調査では明らかにされています。昨今の1on1フィードバックといった施策の有効性は、本調査からもサポートされると言えそうです。

他方で、年齢や勤続年数は組織コミットメントに影響を与えていないことが明らかになりました。先行研究では、年齢が関係しないことは言われてましたが、勤続年数も影響しないという点が本調査の新しい点と言えます。

また、組織コミットメントのうちの規範的要素(「うちの会社に留まるべきだ」)に対しては性差があり、男性の方が女性よりも有意に影響しているようです。2000年代前半の調査であることを鑑みると、猛烈に働く古いタイプの男性社員にありがちな反応なのかもとも思えるような気がします。

組織コミットメントが行動に与える影響

本章における組織コミットメントの定義にある四つの要素それぞれが行動に与える影響についてまとめます。

①内在化要素

最も行動への影響のカバーが大きいものが内在化要素です。これはざっくり言えば組織への一体感を表す要素で、組織にとって望ましい社員の行動に影響を与えるものであることが明らかになりました。

②愛着要素

①と同様に愛着要素も組織コミットメントの先行研究における情緒的要素を示すものです。にもかかわらず、愛着要素は本調査における行動に影響を与えていないことが明らかになりました。著者の解釈によれば、①は組織と自身とを一体的に捉えて一緒によくしようという行動を促すのに対して、②は今の組織の状態性に好ましい感情を抱いている状態であるために将来に向けた行動につながらないというものです。

③規範的要素

会社の行事に参加したり、上司に対して配慮行動をとる、といったものにポジティブな影響を与えます。先述した性別の違いと絡めれば、男性であることが規範的要素に影響し、行動に結びつく側面があるようです。

④存続的要素

行動に対してポジティブな影響を与えることはなく、行事参加に対してネガティブな影響を与えることが明らかになりました。第5章の際にサイドベット理論の再考について触れられていましたが、存続的要素が与える影響についてしっかりと考える必要性があることが本章でも明らかになりました。


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