見出し画像

組織構造論から組織文化論へ。:坂下(2006)論文レビュー

組織文化について書籍や論文を読んでいると坂下先生のレビュー論文がよく引用されています。「組織文化はマネジメント可能か」は以前まとめたので、ご関心がある方はそちらをお読みいただくとして、ここでは以下の論文を基に、組織文化論に影響を与えた組織構造論の流れをレビューします。

坂下昭宣(2006)「経営組織論の不連続的展開:組織構造論から組織文化論」『国民経済雑誌』193(4) 1-15

組織化の二つの原理

組織文化にも、組織構造にも、「組織」という概念が付いています。組織とは何かと問われると回答に窮することがありますが、本論文ではバーナードの定義も引きながら「秩序づけられた行為の体系」としています。つまり、バラバラの意図を持った個人の集団ではなく、各人の行為が共通の意味を持って秩序づけられている集団的行為が組織というわけです。

このような組織化を進める原理には二つあります。一つめは組織における役割を体系化するもので、この観点に立つ組織論が組織構造論です。もう一つは、組織において共有される意味を体系化するもので、こちらが組織文化論となります。

組織構造論の二つのメタファー

組織構造論には、機械メタファーの組織論と有機体メタファーの組織論の二つの流れがあります。機械メタファーの組織論としては、マックス・ウェーバーの官僚制的組織論が挙げられています。組織に属する人々が合理的に役割を分担して業務を遂行して成果を出すという考え方です。合理性というあるべきシステムに基づいた静的なアプローチはクローズド・システム論とも呼ばれます。

こうした合理的なあるべき唯一解として組織を捉えた機械メタファーの組織論に対して、環境変化に適応しながら柔軟に組織を対応させるアプローチが有機体メタファーの組織論です。クローズド・システム論と対比して、オープン・システム論と言われます。この代表例がコンティンジェンシー理論であり、組織構造・組織成果・環境状況という三つの変数間の因果関係を説明しています。

役割の体系から意味の体系へ:組織文化論の誕生

組織構造論が役割の体系化を進めたのに対して、1980年代初頭から組織を意味の体系として捉える組織文化論が注目されるようになりました。当時勢いのあった日本企業を調査する中で、組織文化に対して関心が向くようになったのかもしれません。

意味の体系化を進める上では、(1)意味:シンボルに表現された行為者の意識内容(2)シンボル:行為者が主観的に意味づけた記号(3)シンボリズム:意味をシンボルとして表現する人の行為、という三つの鍵概念があります。組織における人のシンボリズムによって意味の共有化が進み、組織文化が醸成されます。

組織文化を外在的なものとみなしてトップから浸透させる機能主義的組織文化論と、社会的構成物とみなして社員間の相互作用によって生成されるとする解釈主義的組織文化論については、以下のブログで詳しく論じているのでご関心のある方はどうぞ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?